施設内歩行自立度判定表の作成~第2報

【はじめに】  移動手段の自立は利用者本人の自立心を養う上で重要な要素であり、特に歩行での移動の獲得は利用者の施設内の生活範囲の拡大と生活に対する自信にもつながる。その為には利用者の現状の正確な能力をセラピストと、リハビリチームスタッフである日常生活に関わる看護・介護職が共有し、利用者の日常生活に反映される事が必要で、その為の効果的な判定表が有用と考える。  第一報ではBerg balance scale(BBS)が有用と示唆されたが、先行研究では安全な歩行判定には精神面と認知面を考慮する必要性があげられている。今回は精神面として日本版Fall Efficacy Scale(FES)を、認知面...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2009; p. 209
Main Authors 塩崎, 智之, 志田, 啓太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2009
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2009.0.209.0

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Summary:【はじめに】  移動手段の自立は利用者本人の自立心を養う上で重要な要素であり、特に歩行での移動の獲得は利用者の施設内の生活範囲の拡大と生活に対する自信にもつながる。その為には利用者の現状の正確な能力をセラピストと、リハビリチームスタッフである日常生活に関わる看護・介護職が共有し、利用者の日常生活に反映される事が必要で、その為の効果的な判定表が有用と考える。  第一報ではBerg balance scale(BBS)が有用と示唆されたが、先行研究では安全な歩行判定には精神面と認知面を考慮する必要性があげられている。今回は精神面として日本版Fall Efficacy Scale(FES)を、認知面としてstop walking when talking test(SWWT)を取り入れ、歩行自立度判定表の作成を目指した。 【対象と方法】  対象は介助で10m歩行可能な入所者18名(歩行補助具使用可、認知症や失語症によりコミュニケーションが困難な者は除外)。方法は施設内移動別に車椅子群・歩行生活群の2群に分けBBS、FES、SWWTを測定。BBS、FESに関しては2群の得点をMann-whitneyのU検定にて群間比較した(危険率は5%未満)。また、2群の平均値の中間得点をカットオフとし、車椅子群の的中率を求めた。SWWTに関しては車椅子群と歩行生活群によって歩行の中止に差があるかを検証した。 【結果】  歩行生活群と車椅子群との間でBBS得点、FES得点のどちらも有意差を認めた。BBSについては歩行生活群の平均が52点で車椅子群が41点であり、カットオフを47点とした際の的中率は89%であった。FESについては独歩群の平均が37点で車椅子群が26点であり、カットオフを32点とした際の的中率は78%であった。SWWT中止群は7名であり全て車椅子群であった。継続群は11名であり、うち2名が車椅子群、9名が歩行生活群であった。 【考察】  結果よりBBS、FES、SWWTは当施設での歩行自立困難者の選定に有用であることがいえる。BBSでは的中率が89%であり、FESでは78%であった。先行研究にて歩行自立のカットオフ値としてBBSは45点、FESは29点という報告がある。  本研究で協力を得た歩行生活群は3項目の全てでカットオフ値を上回った。また、車椅子群は3項目中1項目はカットオフ値より下回っており、3項目での予測によりハイリスク転倒者の選定が可能と考える。これらより、今回設定したカットオフ値での当施設での歩行自立困難者の選定に妥当性があることがいえる。 【おわりに】  今回の研究でBBS、FES、SWWTの3項目が有用と示唆された。今後は3検査の結果を考慮し、施設内カンファレンスで、各職種の意見交換を行い安全な移動方法を検討していく。また、継続して縦断研究による予測妥当性の検証を実施していく。
Bibliography:209
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2009.0.209.0