東海丘陵要素植物群の無機窒素栄養に対する種特異性
周伊勢湾地域の湿地生態系に生育する東海丘陵要素植物群(東海地方に固有・準固有あるいは隔離分布種)の保全・管理法を明らかにするために,2003 年から2007 年の4 年間,東海丘陵要素植物群のホットスポットである岐阜県恵那市(恵那)および愛知県春日井市(春日井)を調査地とし,各生育地土壌間隙水の pH,EC,NO3-,NO2- を毎月継続的に調査した.恵那の各東海丘陵要素植物群自生地のpH および EC (μS/cm) の中央値(最小値-最高値)は,ミカワバイケイソウ(Veratrum stamineum var. micranthum)自生地が pH 6.3(5.4‐7.4),EC = 24...
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| Published in | 湿地研究 Vol. 3; pp. 3 - 14 |
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| Main Authors | , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本湿地学会
2013
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 2185-4238 2434-1762 |
| DOI | 10.24785/wetlandresearch.WR003002 |
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| Summary: | 周伊勢湾地域の湿地生態系に生育する東海丘陵要素植物群(東海地方に固有・準固有あるいは隔離分布種)の保全・管理法を明らかにするために,2003 年から2007 年の4 年間,東海丘陵要素植物群のホットスポットである岐阜県恵那市(恵那)および愛知県春日井市(春日井)を調査地とし,各生育地土壌間隙水の pH,EC,NO3-,NO2- を毎月継続的に調査した.恵那の各東海丘陵要素植物群自生地のpH および EC (μS/cm) の中央値(最小値-最高値)は,ミカワバイケイソウ(Veratrum stamineum var. micranthum)自生地が pH 6.3(5.4‐7.4),EC = 24(8-75),シラタマホシクサ(Eriocaulon nudicuspe)が pH 6.1(5.5-7.1), EC = 30(11-58),ヘビノボラズ(Berberis sieboldii)が pH 6.5(5.7-7.1),EC = 34(9-60)となった.また恵那と春日井の両方に自生するトウカイコモウセンゴケ(Drosera tokaiensis 以下Dt)は,恵那では pH 6.0(5.3-7.0),EC = 57(23-98),春日井では pH 5.5(4.5-6.9),EC = 138( 105-188)であった.従って本調査地の土壌間隙水は,酸性から中性で,EC はDt 生育地を除いて60 μS/cm 以下であると結論した.さらに,恵那の NO3- 含量を測定した結果,ヘビノボラズは1.1(0-4.4)μM,シラタマホシクサは0.5(0-2.8)μM,ミカワバイケイソウは2.9(0-8.9)μM となり,多くの東海丘陵要素植物群は NO3-含量の低い湿地に生育していた.しかし, モウセンゴケ属2 種については,Dt は恵那では26.2(0-148)μM,春日井では13.1(0-74)μM と低~高 NO3- 含有地に生育しており,一方,東海丘陵要素植物ではないが恵那のモウセンゴケ(D. rotundifolia)は0.8(0-3.3)μM であった.NO2-については,いずれの調査地でも中央値は0.8-1.2 μM と大きな差は認められなかった.以上のことから,Dt は幅広いイオン含有条件および NO3- 含有条件への適応性がある点で種特異性が示された.さらに,東海丘陵要素植物にとって酸性貧栄養条件が生育地の限定要因ではないことが明らかとなった. |
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| ISSN: | 2185-4238 2434-1762 |
| DOI: | 10.24785/wetlandresearch.WR003002 |