脳卒中地域連携パスにおける基本動作の指向とADL改善率・転帰について

【目的】 当院は急性期および回復期リハビリテーション病棟(以下:回復期)をもつ医療機関であり、脳卒中地域連携パス運用開始時、試験的に院内転棟に関しても連携パスを使用した。今回、急性期のリハビリテーションの進行が、回復期におけるADL改善率と転帰にどのように影響しているか検討した。 【対象・方法】 対象はH20年5月~H22年3月までに回復期で連携パスを使用した46名(脳梗塞:31名、脳出血:15名、年齢:73.08±16.59歳)とした。使用データは、回復期在院日数、回復期でのBarthel Index(以下BI)改善率(入院時BI/退院時BI)、各基本動作導入までの日数(寝返りから屋外歩行ま...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2010; p. 211
Main Authors 山口, 洋一, 松尾, 崇史, 田中, 正昭, 光武, 翼, 荒巻, 裕迪
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2010
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2010.0.211.0

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Summary:【目的】 当院は急性期および回復期リハビリテーション病棟(以下:回復期)をもつ医療機関であり、脳卒中地域連携パス運用開始時、試験的に院内転棟に関しても連携パスを使用した。今回、急性期のリハビリテーションの進行が、回復期におけるADL改善率と転帰にどのように影響しているか検討した。 【対象・方法】 対象はH20年5月~H22年3月までに回復期で連携パスを使用した46名(脳梗塞:31名、脳出血:15名、年齢:73.08±16.59歳)とした。使用データは、回復期在院日数、回復期でのBarthel Index(以下BI)改善率(入院時BI/退院時BI)、各基本動作導入までの日数(寝返りから屋外歩行まで)と急性期退院時の自立度、転帰を比較した。 統計解析は各基本動作導入までの期間と回復期のBI改善率、回復期在院日数の相関を比較し、その結果相関のあった初期の基本動作に関して急性期退院時自立度の群間比較をMann-whitneyのU検定にて行い、有意水準5%未満とした。転帰は各基本動作導入までに要した日数に関して、自宅退院とその他の連携先について対応のないt検定で比較し、有意水準5%未満で行った。 【説明と同意】 連携パスの情報をもとに集計・分析を行い地域医療の見直しを行うことを医師により説明し同意を得ている。 【結果】 急性期での各基本動作導入までの日数と回復期在院日数は、手すり手引き歩行、歩行に関して相関関係にあった。BI改善率と各基本動作導入までの日数では、車椅子移乗、手すり手引き歩行、歩行で相関を示した。より初期の基本動作である車椅子移乗の急性期退院時自立度とBI改善率の比較では、全介助以外のそれぞれの自立度(自立・監視・介助)で有意差を認めた。各基本動作導入までの日数と転帰の関係についてはどの動作においても差はなかった。 【考察】 車椅子移乗や歩行訓練に、より早期に介入した場合、回復期でのADL改善率は高く、車椅子移乗の急性期退院時自立度で比較すると、全介助以外の間で有意差を示した。全介助群では、改善率が低いケース、中には改善率が極端に高値を示したケースもあり、退院時の意識障害やその他の因子が結果に影響したと考える。当然ではあるが離床を早期に行う事の重要性がはっきりとした。しかし転帰と基本動作導入までの期間の比較では有意差は見られなかった。この事から今後の課題として、病型や他の要因との解析を行い、良好な転帰を獲得するための要因を模索する必要があると考える。 本研究の意義は、地域連携をよりシームレスなものにするため、パス目標の設定を見直し、模索する事にある。今回、回復期でのADL改善率を高めるため、急性期でより早期に獲得したい基本動作を傾向として示した。よりシームレスなリハビリテーションを提供するため、この結果は施設間の共通目標として意識付けになるではないかと考える。
Bibliography:289
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2010.0.211.0