通所リハ利用高齢者の身体機能と転倒の関連性
【はじめに】 高齢期の転倒による骨折は寝たきりになる主要な原因のひとつであり、高齢者の転倒予防は我々の重要な課題となっている。今回、当院通所リハビリテーション(以下、通所リハ)利用者の身体機能と転倒の関連性を検討したのでここに報告する。 【対象・方法】 対象は、当院通所リハ利用者113名中、自立歩行が可能で重度の認知症が無い42名(男性20名、女性22名)、平均年齢81.2±8.2歳であった。 年齢、性別、身長、体重、BMI、下肢筋力、背筋力、握力、立位バランス、片足立ち、10m歩行時間、Timed Up and Go test(以下、TUGT)、転倒歴,疼痛の有無を以下の方法で測定した。膝関...
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| Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2005; p. 124 |
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| Main Authors | , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2005
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0915-2032 2423-8899 |
| DOI | 10.11496/kyushuptot.2005.0.124.0 |
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| Summary: | 【はじめに】 高齢期の転倒による骨折は寝たきりになる主要な原因のひとつであり、高齢者の転倒予防は我々の重要な課題となっている。今回、当院通所リハビリテーション(以下、通所リハ)利用者の身体機能と転倒の関連性を検討したのでここに報告する。 【対象・方法】 対象は、当院通所リハ利用者113名中、自立歩行が可能で重度の認知症が無い42名(男性20名、女性22名)、平均年齢81.2±8.2歳であった。 年齢、性別、身長、体重、BMI、下肢筋力、背筋力、握力、立位バランス、片足立ち、10m歩行時間、Timed Up and Go test(以下、TUGT)、転倒歴,疼痛の有無を以下の方法で測定した。膝関節伸展筋力は、徒手筋力計を用いて10秒間の等尺性収縮時の最大値を左右2回ずつ測定した。 背筋力は、背筋力計を用いて2回測定した。握力は、握力計を用いて左右それぞれ2回ずつ測定した。すべての筋力値はそれぞれ体重に対する測定値の割合で表した。立位バランスは、重心動揺計を用いて60秒間の開眼閉脚立位を測定し、総軌跡長の値を用いた。片足立ちテストは、開眼片足立ちを左右2回ずつ測定した。10m歩行時間は、直線10mの距離を普段歩いている速さで歩いた時間を2回測定した。TUGTは椅子から立ち上がり、3m先の目印を折り返し、再び椅子に座るまでの時間を2回測定した。転倒歴および疼痛の有無は問診で調査した。転倒歴では過去1年間に転倒の経験がある者を転倒有とし、疼痛では身体の何れかに痛みがある者を疼痛有とした。 【結果・考察】 1.転倒率は50%であり全国平均と比べ高値であった。 2.転倒有群と転倒無群の2群間の比較において有意差がみられたのは、年齢(転倒有群85.5±6.3歳、転倒無群79.0±9.7歳)、片足立ち(転倒有群1.2±3.1秒、転倒無群3.3±2.6秒)、10m歩行時間(転倒有群16.3±4.9秒、転倒無群12.5±5.9秒)、TUGT(転倒有群17.6±7.7秒、転倒無群11.1±6.6秒)であった(p<0.05)。筋力値は転倒歴にかかわらず、全国平均と比べ低値を示した。筋力低下は立位バランス障害の要因となるとの報告からも、当院通所リハ利用者の転倒リスクが高いことが考えられた。 3.性別および疼痛の有無は、転倒歴と有意な関係がなかった。 4.従属変数を転倒歴、説明変数を年齢、性別、BMI、下肢筋力、背筋力、握力、立位バランス、片足立ち、10m歩行、TUGT、疼痛の有無としてロジスティック回帰分析を行った結果、TUGTに有意な関連性が認められた(オッズ比1.7、95%信頼区間1.0‐2.9、p<0.05)。 以上の結果より当院通所リハ利用者では,TUGTの遅延は転倒歴に影響を及ぼしていた。TUGTは動的バランス評価として用いられていることから、動的バランスの低下は転倒リスクを高めていると考えられた。 |
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| ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
| DOI: | 10.11496/kyushuptot.2005.0.124.0 |