膵臓移植実施体制発展への展望

本邦での脳死下膵移植は500件を超えて増加しつつある。しかし、膵移植の待機年数は未だ長く、待機患者数に対して十分な移植が行われているとは言えない。また、施設毎の移植数は偏りがある。膵移植患者の多くは腎不全を合併しており、生命予後に影響するため、早期の膵移植・膵腎同時移植が必要であるが、マージナルドナーの条件が厳しく、他臓器と比較して提供された膵臓の移植利用率は低い。一方で、数多く膵移植を行っても合併症が増加し、成績が低下するのであれば意味がない。今後、移植数の増加、成績の向上とともに持続可能な膵移植の発展に向けて考察する。【互助制度や器材共有の取組】現在進行中であり、さらに成熟していくと予想さ...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s156_1
Main Authors 野口, 浩司, 小川, 智子, 津々浦, 康, 佐藤, 優, 岡部, 安博, 宮本, 京子, 加来, 啓三, 久保, 進祐, 中村, 雅史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.58.Supplement_s156_1

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Summary:本邦での脳死下膵移植は500件を超えて増加しつつある。しかし、膵移植の待機年数は未だ長く、待機患者数に対して十分な移植が行われているとは言えない。また、施設毎の移植数は偏りがある。膵移植患者の多くは腎不全を合併しており、生命予後に影響するため、早期の膵移植・膵腎同時移植が必要であるが、マージナルドナーの条件が厳しく、他臓器と比較して提供された膵臓の移植利用率は低い。一方で、数多く膵移植を行っても合併症が増加し、成績が低下するのであれば意味がない。今後、移植数の増加、成績の向上とともに持続可能な膵移植の発展に向けて考察する。【互助制度や器材共有の取組】現在進行中であり、さらに成熟していくと予想される。肝、腎ではすでに実施されている。【マージナルドナー、却下ドナーの検討】国内での脳死患者は高齢、脳血管障害、心停止ありのマージナルドナーが多い。このようなドナーはどうしてもハイボリュームセンターに回ることが多くなる。また移植却下となったドナーの検討が十分になされているとは言えない。【移植手術および管理の共有と教育】年間1~数件の膵移植に対応するため、移植医教育のためにも近隣ハイボリュームセンターとの連携が重要と考える。膵臓移植はまだまだ成熟しているとはいえず、合併症の検討を十分に行いながら、安全・確実な膵移植の積み重ねと知識の共有が重要である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s156_1