開心術後に発生する疼痛についての一考察

【はじめに】 2006年に心大血管疾患としての疾患分類が定義されてから、全国で心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は、積極的に実施されている。心リハは大きく分けて、内科領域の冠動脈インターベンション後、慢性心不全と外科領域の開心術後に分けられる。ADLの拡大および運動療法を実施するうえでの阻害要因として、(1)不整脈の出現、(2)運動耐用能の低下である。開心術後は、これらの要因に加えて術後疼痛の出現があげられる。術後疼痛の出現は外科領域の特徴であり、我々理学療法士がアプローチできる部分も大きい。しかし、術後疼痛の発生要因について考察した報告は少ない。今回、術後疼痛に関する調査を行ったので報告...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2008; p. 83
Main Authors 大平, 高正, 松丸, 一朗, 木村, 浩三, 高井, 秀明, 井上, 博文, 山田, 卓史, 弓, 早苗, 薬師寺, 里江
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2008
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2008.0.83.0

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Summary:【はじめに】 2006年に心大血管疾患としての疾患分類が定義されてから、全国で心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は、積極的に実施されている。心リハは大きく分けて、内科領域の冠動脈インターベンション後、慢性心不全と外科領域の開心術後に分けられる。ADLの拡大および運動療法を実施するうえでの阻害要因として、(1)不整脈の出現、(2)運動耐用能の低下である。開心術後は、これらの要因に加えて術後疼痛の出現があげられる。術後疼痛の出現は外科領域の特徴であり、我々理学療法士がアプローチできる部分も大きい。しかし、術後疼痛の発生要因について考察した報告は少ない。今回、術後疼痛に関する調査を行ったので報告する。 【方法】 対象は、2006年1月から2007年9月に、当院心臓血管外科にて行われた開心術患者65例。術式は、CABG23例、AVR19例、MVR10例、AVR+MVR5例、CABG+AVR1例、CABG+MVR1例、CABG+MVR+AVR1例、その他4例であった。調査方法は、カルテによる後方視的調査とした。疼痛部位は患者の訴えおよびセラピストのアセスメントにより判断した。また、疼痛の有無で群分けし統計学的検討を行った。 【結果】 術後疼痛の訴えた患者は31例(48%)であった。疼痛の発生部位(重複あり)は、肋椎関節部23例、胸肋関節部8例、術創部(正中創)7例、頚部3例であった。疼痛の有無による2群間には、年齢、性別、術式による差はなかった。 【考察】 開心術後の疼痛発生の主な部位が、肋椎関節および胸肋関節であることから、肋骨が何らかの原因になっていると推察される。特に上位肋骨の運動方向は開胸器の運動方向と異なるため、手術時に上位肋骨に関連する軟部組織が障害されたことで疼痛が出現している可能性がある。加えて、術中体位も術後疼痛の発生に影響している可能性がある。開心術の体位は、術野を確保するために頚部伸展および胸椎を伸展させる。胸椎を伸展させるために胸椎部に肩枕を挿入する。肋椎関節部に疼痛を訴えた患者は、肩枕の設置場所と同部位の胸椎が扁平になっていた。胸椎の扁平化が、肋骨の可動性を低下させ、その結果、疼痛が出現していると推察した。今回、調査していないが、手術時の肋骨に関連する軟部組織の障害に起因した疼痛では術後早期から疼痛が出現する。胸椎の扁平化による肋骨可動域の低下に起因する疼痛では上肢の使用頻度が増えてから、つまりADL拡大時に疼痛が出現する。疼痛出現時期との関連性については今後の課題とした。また、少数ではあるが、術創部や上位肋骨の関与が考えにくい部位にも疼痛の訴えがあった。変形性頚椎症などの頚椎疾患が既往として存在すれば、長時間の頚部伸展位によって神経症状が出現する可能性も否定できないため、術前に評価しておくことも重要である。
Bibliography:83
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2008.0.83.0