当科におけるPCP outbreakの検討とST合剤の予防投与開始後の経過

【背景】腎移植後の免疫抑制状態にあるレシピエントは常に日和見感染症の脅威に晒されており、ニューモシスチス肺炎(PCP)は最も注意すべき感染症の1つである。当科では過去のPCP outbreakの経験から、2019年5月より全移植後患者への継続的なST合剤の予防投与を開始した。4年が経過した現在までのPCPの発症状況を含め報告する。【対象・方法】当科において2017年1月から2019年3月の間で、PCPを発症した腎移植レシピエント10例を対象とし、外来接触歴、予防内服期間、移植後から発症までの期間、移植腎機能などについてretrospectiveに分析を行った。また予防投与開始後の発症状況につい...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s317_2
Main Authors 中島, 一朗, 近藤, 晃, 三宮, 彰仁, 川瀬, 友則, 中島, 龍一朗, 春口, 和樹, 蜂須賀, 健, 小山, 一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.58.Supplement_s317_2

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Summary:【背景】腎移植後の免疫抑制状態にあるレシピエントは常に日和見感染症の脅威に晒されており、ニューモシスチス肺炎(PCP)は最も注意すべき感染症の1つである。当科では過去のPCP outbreakの経験から、2019年5月より全移植後患者への継続的なST合剤の予防投与を開始した。4年が経過した現在までのPCPの発症状況を含め報告する。【対象・方法】当科において2017年1月から2019年3月の間で、PCPを発症した腎移植レシピエント10例を対象とし、外来接触歴、予防内服期間、移植後から発症までの期間、移植腎機能などについてretrospectiveに分析を行った。また予防投与開始後の発症状況についても調査した。【結果】10例のPCP outbreakを経験し、死亡を2例、グラフトロスを3例認めた。移植後から発症までの期間は平均137.8か月、移植後のST合剤の内服期間は平均6.75か月で、全例で発症時にST合剤を内服していなかった。8例で発症前に同一の待合室での接触があったと考えられた。予防投与を開始以降は、当科外来通院中の721人においてPCPの発症例はなかった。【考察】PCP outbreakの原因は、保菌者もしくは発症者との接触が一因であった。全発症例で発症時にST合剤を内服していなかったことに加え、予防投与の開始後は発症例を認めず、ST合剤の予防投与が発症抑制に効果的である可能性が示唆された。またCOVID-19の流行期とも重なっており、患者同士の接触機会の減少も寄与していると思われた。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s317_2