内側型変形性膝関節症に対する理学療法の一考察

【はじめに】右変形性膝関節症(以下,右膝OA)の診断を受け、関節鏡による右膝内側半月板切除術を行った症例に対し、当初は右膝関節の機能改善を目的に理学療法を実施した。しかし、歩行時右立脚期に右膝関節外側部の違和感が持続した。そこで骨盤・腰椎の安定性獲得に着目した理学療法を実施した。本症例に対し理学療法を行う上での臨床的指標及びその実際について報告する。 【症例紹介】年齢:63歳 性別:女性 身長:153cm 体重:50kg BMI:32.7 診断名:右膝OA、右膝内側半月板損傷 Kellgren-Lawrence分類:GradeII 【理学療法評価】主訴:歩行時右膝関節外側部の違和感、 関節可動...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2005; p. 93
Main Authors 島澤, 真一, 菅川, 祥枝, 木藤, 伸宏, 辛嶋, 良介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2005
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2005.0.93.0

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Summary:【はじめに】右変形性膝関節症(以下,右膝OA)の診断を受け、関節鏡による右膝内側半月板切除術を行った症例に対し、当初は右膝関節の機能改善を目的に理学療法を実施した。しかし、歩行時右立脚期に右膝関節外側部の違和感が持続した。そこで骨盤・腰椎の安定性獲得に着目した理学療法を実施した。本症例に対し理学療法を行う上での臨床的指標及びその実際について報告する。 【症例紹介】年齢:63歳 性別:女性 身長:153cm 体重:50kg BMI:32.7 診断名:右膝OA、右膝内側半月板損傷 Kellgren-Lawrence分類:GradeII 【理学療法評価】主訴:歩行時右膝関節外側部の違和感、 関節可動域検査:股関節屈曲(右/左)100°/105°伸展5°/10°膝関節屈曲145°/150°伸展-5°/0°徒手筋力検査(右/左):腸腰筋・大殿筋3/3 中殿筋3/4 大腿筋膜張筋4/4 前額面の立位姿勢:上半身重心は左側偏位、右上前腸骨棘・左肩挙上、骨盤右回旋、上部体幹左回旋、両大腿、下腿は外旋位を呈していた。右腸脛靱帯の緊張が高い状態であった。前額面の右片脚立位姿勢:右骨盤後傾・右回旋、上部体幹左回旋していた。右大腿骨・脛骨アライメントは内反位を呈していた。右腸脛靱帯の緊張が高く、上半身重心は右側へ移動できなかった。 【臨床指標】右片脚立位姿勢を臨床指標として、骨盤・腰椎の安定性獲得を図り、右股関節外転・膝関節内反のモーメントを軽減する事を目的に理学療法を実施した。 【理学療法アプローチ】1)腸腰筋・中殿筋筋機能改善運動、2)骨盤の中間位保持運動、3)重心側方移動運動を主として治療内容を組み立てた。 【結果及び考察】本症例の右片脚立位姿勢は右骨盤が後傾、骨盤・腰椎の安定性が低下、そのため上半身重心の右側への移動が困難となっていたと推察した。この姿勢では右股関節外転・右膝関節内反モーメントが増大していると考えられた。また中殿筋による骨盤傾斜の制御は困難となり、右腸脛靱帯を伸張させた状態で骨盤傾斜を制御していると考えられた。このため右腸脛靱帯が常に過緊張状態となり、違和感が出現していると推察した。そこで右片脚立位姿勢の改善を図るため、理学療法を実施した。その結果、骨盤の中間位保持が可能となり、体幹・骨盤の回旋も消失した。この状態は骨盤・腰椎の安定性が改善したと推察できる。また骨盤・腰椎の安定性の向上により、上半身重心が右支持面上への移動が可能になった。さらに殿筋群と腸腰筋による片脚立位時の骨盤アライメントの制御が改善したことで、右股関節外転・膝関節内反モーメントが軽減し、違和感が消失したと推察した。 【まとめ】右片脚立位姿勢を臨床指標とし、姿勢、動作方略改善を図るための理学療法を実施した。その結果、姿勢、動作方略の改善が得られ、症状が消失した。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2005.0.93.0