生体ドナーの肺移植後長期的なQOLの検討

背景:日本では脳死ドナーが少なく移植待機期間が問題となるため、代わりに生体肺移植が行われてきた。しかし生体ドナーの健康関連QOL(HRQOL:Health Related Quality of Life)の長期的影響の報告は殆どない。方法:1998年10月から2019年12月まで岡山大学病院の生体肺ドナーを対象に調査を行った。HRQOLは国際的に広く使われているSF-36®︎の3つのサマリースコア(PCS:Physical component summary、MCS:Mental component summary、RCS:Role/Social component summary)を用いて測...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s172_1
Main Authors 諏澤, 憲, 豊岡, 伸一, 松原, 慧, 橋本, 好平, 枝園, 和彦, 石上, 恵美, 岡﨑, 幹生, 杉本, 誠一郎, 藤井, 健人, 石原, 恵, 田中, 真, 山根, 正修, 三好, 健太郎, 山本, 寛斉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s172_1

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Summary:背景:日本では脳死ドナーが少なく移植待機期間が問題となるため、代わりに生体肺移植が行われてきた。しかし生体ドナーの健康関連QOL(HRQOL:Health Related Quality of Life)の長期的影響の報告は殆どない。方法:1998年10月から2019年12月まで岡山大学病院の生体肺ドナーを対象に調査を行った。HRQOLは国際的に広く使われているSF-36®︎の3つのサマリースコア(PCS:Physical component summary、MCS:Mental component summary、RCS:Role/Social component summary)を用いて測定した。結果:対象の174人の生体ドナーのうち117人が参加した。移植時のドナーの平均年齢は38.7±10.1歳、レシピエントは29.0±15.9歳であった。ドナーとレシピエントの関係は、親子(68例)、兄弟姉妹(33例)、配偶者(13例)、その他(3例)であった。Lung Allocation Score(LAS)は51.3±16.2であった。20人(28%)のレシピエントが移植後に死亡した。殆どのドナーでスコアは全国平均を上回ったが、平均を下回る(低スコア)ドナーを認めた。低MCSのリスク因子には、ドナー年齢(<40歳)(p<0.001)とレシピエント年齢(<18歳)(p=0.032)が含まれていた。低RCSでは、LAS(≧50)(p<0.002)とレシピエントの死亡(p=0.005)が含まれていた。一方で低PCSの予測因子は特定できなかった。結論:生体ドナーのHRQOLが長期的に良好なことが示された。今後ドナーに対しHRQOLに関する十分なリスク説明を行い、リスクの高いドナーには長期的なフォローも検討する必要がある。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s172_1