常染色体優性多発嚢胞腎(ADPKD)と固有腎摘除術
【目的】常染色体優性多発嚢胞腎(ADPKD)はどのような患者に固有腎摘除術を行うべきか、どのタイミングで行うことが最良かについて未だ一定の見解を得ていない。我々は様々な観点から固有腎摘除術の要否、タイミングの適否について検討を行った。【方法】2010年7月から2022年4月までに当院でADPKDを原疾患として腎移植術を施行した94例に関して後方視的に解析を行った。【結果】術前に嚢胞感染歴がある症例は16人であった。術前TAE、術前腎摘、術中腎摘を行ったのは22例で、介入していない群とでは術前の嚢胞感染歴に差を認めなかった(p=0.663)。介入を行っていない67例のうち術前に嚢胞感染を起こした...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s304_3 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s304_3 |
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Summary: | 【目的】常染色体優性多発嚢胞腎(ADPKD)はどのような患者に固有腎摘除術を行うべきか、どのタイミングで行うことが最良かについて未だ一定の見解を得ていない。我々は様々な観点から固有腎摘除術の要否、タイミングの適否について検討を行った。【方法】2010年7月から2022年4月までに当院でADPKDを原疾患として腎移植術を施行した94例に関して後方視的に解析を行った。【結果】術前に嚢胞感染歴がある症例は16人であった。術前TAE、術前腎摘、術中腎摘を行ったのは22例で、介入していない群とでは術前の嚢胞感染歴に差を認めなかった(p=0.663)。介入を行っていない67例のうち術前に嚢胞感染を起こした症例は13例、術後は4例であった。術前、術後の両方で嚢胞感染を起こした症例は0例で、術後嚢胞感染のリスクとなる因子は認めなかった(年齢、性別、糖尿病、術前嚢胞感染、術前嚢胞容積、それぞれp=0.369,0.533,0.996,0.995,0.742)。また自己腎への介入の有無では予後に影響はなかった(p=0.336)自己腎容積は術前から術後1年で41.1±16.5%縮小し、縮小率と年齢、術前BMIに負の相関(p<0.05)を認めた。【結果】腎移植を行うことで嚢胞腎容積は有意に縮小し、若く、術前BMIが低値なレシピエントほど嚢胞が縮小する。また移植後嚢胞感染予防としての固有腎摘除術は行わなくてもよい可能性があり、手術時間や出血量などの周術期合併症を減らすことができる。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s304_3 |