人工膝関節全置換術後の深屈曲獲得に向けた試み

【目的】 人工膝関節全置換術(以下TKA)後における関節可動域の回復は、術後早期ほど大きな改善を認めるが、その後徐々に緩やかとなり、やがてほぼ一定の可動域を保つという報告が散見される。そこで今回、術後8日間に渡り当院で行っている硬膜外ブロックと理学療法の併用による屈曲可動域訓練の方法と、退院時獲得した屈曲角度の成績を報告する。 【方法】 2008年6月から2009年12月の期間に深屈曲が可能な機種であるScorpio-NRGを使用し、同一術者によって行われた変形性膝関節症患者102例107膝(平均年齢72.4±4.4歳)を対象とした。術後理学療法は関節内留置ドレーンが抜去した術後2日目より開始...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2010; p. 51
Main Authors 黒田, 麻衣子, 田鹿, 慎二, 島内, 卓, 寺崎, 裕亮
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2010
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2010.0.51.0

Cover

More Information
Summary:【目的】 人工膝関節全置換術(以下TKA)後における関節可動域の回復は、術後早期ほど大きな改善を認めるが、その後徐々に緩やかとなり、やがてほぼ一定の可動域を保つという報告が散見される。そこで今回、術後8日間に渡り当院で行っている硬膜外ブロックと理学療法の併用による屈曲可動域訓練の方法と、退院時獲得した屈曲角度の成績を報告する。 【方法】 2008年6月から2009年12月の期間に深屈曲が可能な機種であるScorpio-NRGを使用し、同一術者によって行われた変形性膝関節症患者102例107膝(平均年齢72.4±4.4歳)を対象とした。術後理学療法は関節内留置ドレーンが抜去した術後2日目より開始するが、この際20分前に硬膜外より1%カルボカインを6cc注入し、手術領域の温痛覚を十分に鈍らせた上で屈曲可動域訓練を行い、これを術後6日間継続した。術後7日目は術者立会いの下、カルボカインを15ccに増量し、術中に得られた屈曲角度を目標に屈曲可動域訓練を行う。術後8日目は再び6ccのカルボカインを注入し、20分後に屈曲可動域訓練を行う。9日目以降は硬膜外ブロックを中止し理学療法とCPMを中心とした屈曲可動域訓練を退院時まで一貫して行った。 【結果】 術前屈曲可動域別に100°未満(A群、4膝)100以上120°未満(B群、13膝)120°以上(C群、90膝)の3群に分類し各群で退院時の平均屈曲角度を見てみるとA群は術中124±10.1°に対し退院時112.3°±8.8°、B群は術中139.2±13.8°に対し退院時124.7°±10.2°、最も多いC群は術中141.3°±6.9°に対し退院時134.2±9.5°であった。 【考察】 TKA術後可動域を左右する因子は大きくわけて術前因子,術後因子にわかれる。術前因子としては術後の軟部組織の状態を反映する術前屈曲可動域,術後因子としては術創部を中心とした疼痛が考えられ、関節可動域訓練は手術中に得られた可動域をいかに維持できるかが課題となる。今回、術後早期の8日間に渡り屈曲可動域訓練に硬膜外ブロックを併用することで疼痛のコントロールが可能となり、早期よりスムーズな可動域訓練が行えた事で、術後の創治癒の過程において発生する組織間の癒着を最小限に留めることができたと考える。しかし、A群B群においては術前の屈曲角度が120°未満であったことから膝蓋腱を含む伸展機構が硬く、退院時130°に到達しなかったが、C群においては退院時屈曲角度が134.2±9.5°であり諸家の報告と比較すると同等もしくは優れた結果となった。今回の結果から、TKA術後早期の可動域訓練時の疼痛がコントロールされ早期に良好な屈曲角度を得られれば,最終的に良好な可動域の獲得が期待できると考える。
Bibliography:144
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2010.0.51.0