COVID-19罹患後ドナーからの脳死肺移植の1例

【背景】 肺移植に限りドナーからのSARS-CoV2伝播が起こりうるため、本邦では感染流行期には臓器提供の著しい落ち込みが見られる。しかし、感染流行期であっても医療者と移植患者の安全を担保しながら、臓器不全患者の救命に努める必要がある。今回、新型コロナ第6波の期間中にCOVID-19罹患後ドナーからの脳死肺移植を経験した。【症例】レシピエントは原疾患が特発性間質性肺炎で、脳死肺移植登録後1年弱の待機期間中であった。ドナーは、職場クラスター発生によりCOVID-19に罹患し、無症状で自宅療養後に職場復帰したのち、クモ膜下出血を発症し臓器提供となった。ドナーはCOVID-19診断後5週間経過時点で...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s340_3
Main Authors 辻, あゆみ, 田中, 健之, 朝重, 耕一, 小畑, 智裕, 市川, 宏美, 土肥, 良一郎, 松本, 理宗, 中司, 交明, 泉川, 公一, 町野, 隆介, 松本, 桂太郎, 芦澤, 信之, 溝口, 聡, 永安, 武
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s340_3

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Summary:【背景】 肺移植に限りドナーからのSARS-CoV2伝播が起こりうるため、本邦では感染流行期には臓器提供の著しい落ち込みが見られる。しかし、感染流行期であっても医療者と移植患者の安全を担保しながら、臓器不全患者の救命に努める必要がある。今回、新型コロナ第6波の期間中にCOVID-19罹患後ドナーからの脳死肺移植を経験した。【症例】レシピエントは原疾患が特発性間質性肺炎で、脳死肺移植登録後1年弱の待機期間中であった。ドナーは、職場クラスター発生によりCOVID-19に罹患し、無症状で自宅療養後に職場復帰したのち、クモ膜下出血を発症し臓器提供となった。ドナーはCOVID-19診断後5週間経過時点での鼻咽頭スワブ検体がPCR陽性(サイクル数Ct値34、36)であったため、上位施設が辞退し、移植待機リスト下位であった当該患者へ斡旋があった。感染症専門医へコンサルトし、極めて低いウイルス感染性(高Ct値より)、再検査陰性(気管支吸引痰および鼻咽頭スワブ)、レシピエントの抗体保持への期待(COVID-19既感染、ワクチン2回接種後)を根拠に移植を受諾した。下葉無気肺を有するマージナル肺であったが、左片肺移植を実施した。術後はタクロリムス脳症と急性拒絶の合併があったが、その後の経過は順調であった。術後も定期的なPCR検査を行ったが、レシピエントへのCOVID-19伝播を認めなかった。【考察】本症例では「COVID-19の移植医療における基本指針(第5版)」に準じた対応でCOVD-19罹患後ドナーからの脳死左肺移植に成功した。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s340_3