心臓移植における術前脱感作療法
移植前の抗HLA抗体の存在は、ドナーの出現の可能性を減少させることによる待機期間延長や移植後の抗体関連型拒絶(AMR)と関連する。症例:35歳男性。拡張型心筋症による心不全で31歳時に心臓移植登録、植込み型補助人工心臓装着。登録時のPRAは、Class 1 0%, Class 2 3%であった。定期的なPRA検査ではClass 1、Class 2ともに陰性であったが、34歳時に虫垂炎周術期の大量輸血、ドライブライン感染による菌血症を経験した。その後PRAは、Class 1 19.4%、Class 2 54.9%と陽性に転じた。移植待機順位が上位となり、可能性のあるドナーとのクロスマッチにおいて...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s197_2 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s197_2 |
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Summary: | 移植前の抗HLA抗体の存在は、ドナーの出現の可能性を減少させることによる待機期間延長や移植後の抗体関連型拒絶(AMR)と関連する。症例:35歳男性。拡張型心筋症による心不全で31歳時に心臓移植登録、植込み型補助人工心臓装着。登録時のPRAは、Class 1 0%, Class 2 3%であった。定期的なPRA検査ではClass 1、Class 2ともに陰性であったが、34歳時に虫垂炎周術期の大量輸血、ドライブライン感染による菌血症を経験した。その後PRAは、Class 1 19.4%、Class 2 54.9%と陽性に転じた。移植待機順位が上位となり、可能性のあるドナーとのクロスマッチにおいてCDC-T cell(+)だがCDC-B cell(-)を認めた。脱感作療法として定期的な免疫グロブリン(IVIg)投与と適切なドナー出現時には、術前に血漿交換を行うこととした。登録から約4年後にドナー出現、移植前のPRA class 1 2.2%, PRA class 2 25.6%であった。移植後に抗ドナーHLA抗体陽性(DR15)が判明したが、血漿交換、IVIg投与後のPRAは陰性であった。移植後5年経過しているが、PRAは陰性でAMRなく経過している。総括:心臓移植において術前脱感作療法は、待機中もしくは移植直前におこなわれるが、評価方法、判断基準、治療時期、内容は明確でない。移植免疫センターとの密接な連携が必須であり、抗HLA抗体陽性の移植においてどの程度リスクを許容するか、脱感作療法の治療戦略について術前に検討することが必要である。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s197_2 |