南海地震水没災害伝承の痕跡発掘に向けた沿岸域海底調査:須崎市野見湾を例に

高知県須崎市野見湾では,白鳳地震によって水没した村『黒田郡』の伝承が語り継がれているが,その証拠は見つかっていない.そこで本研究では,野見湾内で海底調査を行い『黒田郡』の痕跡を探索した.その結果,海底遺構の目撃情報がある戸島北東部の海底浅部(水深6m~7m)に,面積約0.09km2の沖側に緩やかに傾斜する平坦な台地を確認した.台地表層は主に薄い砂で覆われており,沿岸に近づくにつれて円礫が多くなった.また,砂層の下位は硬い基盤岩と考えられ,海底台地は旧海食台(波食棚)と推定される.海水準変動と地震性地殻変動を踏まえると南海地震により海食台は約7m 沈降したと推定できる.本調査では黒田郡の痕跡は発...

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Published in沿岸海洋研究 Vol. 59; no. 1; pp. 21 - 31
Main Authors 浦本, 豪一郎, 岡﨑, 啓史, 徳山, 英一, 谷川, 亘, 田中, 幸記, 山本, 裕二, 井尻, 暁, 星野, 辰彦, 廣瀬, 丈洋, 村山, 雅史, 濱田, 洋平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本海洋学会 沿岸海洋研究会 2021
Subjects
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ISSN1342-2758
2434-4036
DOI10.32142/engankaiyo.2021.4.001

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Summary:高知県須崎市野見湾では,白鳳地震によって水没した村『黒田郡』の伝承が語り継がれているが,その証拠は見つかっていない.そこで本研究では,野見湾内で海底調査を行い『黒田郡』の痕跡を探索した.その結果,海底遺構の目撃情報がある戸島北東部の海底浅部(水深6m~7m)に,面積約0.09km2の沖側に緩やかに傾斜する平坦な台地を確認した.台地表層は主に薄い砂で覆われており,沿岸に近づくにつれて円礫が多くなった.また,砂層の下位は硬い基盤岩と考えられ,海底台地は旧海食台(波食棚)と推定される.海水準変動と地震性地殻変動を踏まえると南海地震により海食台は約7m 沈降したと推定できる.本調査では黒田郡の痕跡は発見できなかったが,水中遺跡研究に対する多角的な調査手法を検討することができた.特に,インターフェロメトリソナーの後方散乱強度分布による底質観察とStructure fromMotion(SfM)技術を用いた海底微地形の構築は,今後浅海における水中遺跡調査に活用できる.
ISSN:1342-2758
2434-4036
DOI:10.32142/engankaiyo.2021.4.001