生体肝移植後門脈血栓症に対して、浅大腿静脈によるjumping graftで血行再建を行った1例

緒言:生体肝移植後の門脈血栓症は、グラフト不全に繋がる重篤な合併症であり早期の発見、早期の血行再建が必要である。その再建方法には、外科的治療、血管内治療など様々なものがある。我々は、特発性門脈圧亢進症患者に対する生体肝移植後に発生した門脈血栓症に対して、右浅大腿静脈を用いたjumping graftで血行再建を行った1例を経験したので報告する。症例:38歳男性。特発性門脈圧亢進症を背景とした非代償性肝硬変・肝細胞癌に対して、左葉グラフトによる生体肝移植を行った。術後1日目夕方の血液検査、エコー所見から門脈血流血栓症を疑った。撮影した造影CTで、膵上縁から門脈吻合部にかけての血栓を認め血行再建術...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s388_3
Main Authors 内田, 雄一郎, 小島, 正之, 高原, 武志, 岩間, 英明, 須田, 康一, 加藤, 悠太郎, 三井, 哲史, 水本, 拓也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s388_3

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Summary:緒言:生体肝移植後の門脈血栓症は、グラフト不全に繋がる重篤な合併症であり早期の発見、早期の血行再建が必要である。その再建方法には、外科的治療、血管内治療など様々なものがある。我々は、特発性門脈圧亢進症患者に対する生体肝移植後に発生した門脈血栓症に対して、右浅大腿静脈を用いたjumping graftで血行再建を行った1例を経験したので報告する。症例:38歳男性。特発性門脈圧亢進症を背景とした非代償性肝硬変・肝細胞癌に対して、左葉グラフトによる生体肝移植を行った。術後1日目夕方の血液検査、エコー所見から門脈血流血栓症を疑った。撮影した造影CTで、膵上縁から門脈吻合部にかけての血栓を認め血行再建術を行った。術中所見でも、造影CT所見と同様に膵上縁から門脈吻合部にかけて広範囲に血栓を認めた。レシピエントの血管内皮の異常に起因する血栓症が疑われたこと、及び血栓が広範囲であったことから、膵下縁からグラフト門脈までのjumping graftを行う方針とした。右大腿から広範囲に浅大腿静脈を採取し、膵下縁から膵前面・胃背側を通すjumping graftで血行再建を行い、良好な門脈血流を得た。考察:浅大腿静脈を用いたjumping graftは、広範囲の門脈置換を要する肝移植後門脈血栓症に対する有用な治療オプションになると考える。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s388_3