脳死下膵腎同時移植後に発症したサイトメガロウイルス血症の1例
【背景】サイトメガロウイルス(CMV)感染症は最も注意すべき臓器移植後感染症の一つであり,グラフト機能不全・レシピエントの生命予後に大きく関わる.今回我々は,脳死下膵腎同時移植(SPK)後のバルガンシクロビル(VGCV)予防投与中にCMV血症をきたした1例を経験したので報告する.【症例】症例は55歳女性.1型糖尿病に対してSPKを実施した.血清中CMV抗体は,ドナー陰性,レシピエント陽性であった.術後6日間はガンシクロビル静注を行い,術後7日目以降VGCV予防投与(450 mg/回,週2回)に移行した.免疫抑制剤は,サイモグロブリン・タクロリムス・ミコフェノール酸モフェチル(MMF)・ステロイ...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s319_1 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s319_1 |
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Summary: | 【背景】サイトメガロウイルス(CMV)感染症は最も注意すべき臓器移植後感染症の一つであり,グラフト機能不全・レシピエントの生命予後に大きく関わる.今回我々は,脳死下膵腎同時移植(SPK)後のバルガンシクロビル(VGCV)予防投与中にCMV血症をきたした1例を経験したので報告する.【症例】症例は55歳女性.1型糖尿病に対してSPKを実施した.血清中CMV抗体は,ドナー陰性,レシピエント陽性であった.術後6日間はガンシクロビル静注を行い,術後7日目以降VGCV予防投与(450 mg/回,週2回)に移行した.免疫抑制剤は,サイモグロブリン・タクロリムス・ミコフェノール酸モフェチル(MMF)・ステロイドの4剤を使用した.術後経過は良好で,術後33病日に退院した.VGCV予防投与中の術後59日目にCMVアンチゲネミアが陽性化したため,MMFを減量し,VGCV連日投与(450 mg/回)に変更した.MMF減量・VGCV連日投与開始後3週間でCMVアンチゲネミアは陰性化したため,VGCV予防投与(450 mg/回,週2回)に移行した.その後血球減少が出現したためVGCVを中止し,MMFをエベロリムスに変更した.CMVアンチゲネミアは陰性で経過し,移植後7か月現在,膵腎グラフトの機能は良好である(Ccr 65.8 mL/min,HbA1c 5.8%).【結語】SPK後にCMV血症を合併した場合には,速やかにVGCVを治療量とすることでCMV感染の重症化を防ぎ,膵腎グラフト機能を温存することが可能である. |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s319_1 |