福岡大学での肺移植後真菌感染症に対する治療症例の検討
背景と目的:肺移植後の真菌感染症の頻度は10%程度で、多くは移植後半年以内に発症し致死率は50%を超えると報告されており、診断と治療に難渋するケースも多い。当科で経験した肺移植後真菌感染症を抽出し、その発見動機や治療について検討する。対象:2006年10月から2023年3月までに福岡大学で肺移植を実施した67例の臨床データを後方視的に抽出した。結果:脳死両肺移植3例および脳死片肺移植6例の計9例 (13%)が真菌感染症として治療され、アスペルギルス症が6例、カンジタ症が1例、ムーコル症が1例、菌同定が1例であり、5例は無症候性であった。原疾患は間質性肺炎4例、リンパ脈管筋腫症2例、肺高血圧症1...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s268_2 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s268_2 |
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Summary: | 背景と目的:肺移植後の真菌感染症の頻度は10%程度で、多くは移植後半年以内に発症し致死率は50%を超えると報告されており、診断と治療に難渋するケースも多い。当科で経験した肺移植後真菌感染症を抽出し、その発見動機や治療について検討する。対象:2006年10月から2023年3月までに福岡大学で肺移植を実施した67例の臨床データを後方視的に抽出した。結果:脳死両肺移植3例および脳死片肺移植6例の計9例 (13%)が真菌感染症として治療され、アスペルギルス症が6例、カンジタ症が1例、ムーコル症が1例、菌同定が1例であり、5例は無症候性であった。原疾患は間質性肺炎4例、リンパ脈管筋腫症2例、肺高血圧症1例、肺気腫1例、嚢胞性線維症1例で平均年齢は49.7歳 (27-59)、男性6例であった。真菌感染が判明した時期は平均426日(24-1742)であったが、5例は術後1年以内の発症であった。1年以降(晩期)発症の1例に対しては自己肺全摘により感染コントロールでき術後6年生存しており、3例はいずれも慢性拒絶を伴っていた。直接死因2例を含む5例(55.5%)が死亡しており、生存中4例のうち2例は現在積極的治療中である。結語:アスペルギルスを含む真菌感染症は無症候性のこともあり、治療に難渋し罹患後の死亡率も高い。内服薬の選択、患者教育を含めた予防が重要と考えられる。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s268_2 |