Fontan associated liver disease(FALD)に肝移植を検討した1例
Fontan手術は機能心室が一つの先天性心疾患に対して上大静脈と下大静脈を肺動脈にバイパスする手術である。Fontan循環では高い中心静脈圧が必要であり、これに起因する肝線維化と肝細胞癌がFALDとして注目されている。FALDに対して肝移植を検討した症例を報告する。症例は25歳男性。両大血管右室起始症・大動脈縮窄症・肺高血圧症にて生後7ヵ月にGlenn手術、1歳時にFontan手術、8歳時に機械弁による大動脈弁置換術を受けていた。FALD関連肝癌が多発し、TACE・RFA・全身化学療法を受けたが、肝予備能が低下し、生体肝移植希望で当院を受診した。移植の可能性を追求するため、循環器内科、小児科と...
Saved in:
Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s323_1 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s323_1 |
Cover
Summary: | Fontan手術は機能心室が一つの先天性心疾患に対して上大静脈と下大静脈を肺動脈にバイパスする手術である。Fontan循環では高い中心静脈圧が必要であり、これに起因する肝線維化と肝細胞癌がFALDとして注目されている。FALDに対して肝移植を検討した症例を報告する。症例は25歳男性。両大血管右室起始症・大動脈縮窄症・肺高血圧症にて生後7ヵ月にGlenn手術、1歳時にFontan手術、8歳時に機械弁による大動脈弁置換術を受けていた。FALD関連肝癌が多発し、TACE・RFA・全身化学療法を受けたが、肝予備能が低下し、生体肝移植希望で当院を受診した。移植の可能性を追求するため、循環器内科、小児科とも合同カンファレンスを繰り返した。しかし、AFPが急上昇しており、肺にも転移を疑う病変が見つかり、肝疾患の病状的に肝移植適応外と判断した。さらに、Fontan循環では肺動脈圧上昇が循環破綻をきたすため開胸操作を避ける必要がある事、一方で肺循環の維持に中心静脈圧を一定以上に維持する必要がある事、周術期に体外循環PCPSやECMOが必要となる可能性が高く、この場合高血流量を維持しないと機械弁である大動脈弁が閉塞してしまう事、開胸操作のPCPSでは必要な流量を維持できない事、などの問題があり、心疾患的にも耐術しないとの結論に至った。FALDは今後増加する可能性があり、若年症例も多く、今後の対応策が望まれる。 |
---|---|
ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s323_1 |