農業技術導入の意思決定要因分析における情報利用―不完全一対比較によるAHPウェイトの再計算の適用

本研究では,開発途上国における農業技術普及の現場を対象として,一年生換金作物を選定する際の経営者の主体的な意思決定過程を階層分析法(Analytical Hierarchy Process:AHP)により検討するにあたり,調査対象となる多くの経営者から首尾一貫した一対比較の結果が得られないという問題点を解決するために,多面的な情報利用の方法を提案することを目的とする.具体的に,通常のAHPの方法では,一対比較の中に比較しづらい要素のペアが存在する,あるいは,分析対象となる要素数により一対比較の総数が膨大になるなど,調査対象となる経営者の回答時の負担が大きくならざるを得なかった.そして,このよう...

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Published in農業情報研究 Vol. 31; no. 3; pp. 87 - 94
Main Authors 松下, 秀介, 孫, 雯莉, 中條, 淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 農業情報学会 01.10.2022
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ISSN0916-9482
1881-5219
DOI10.3173/air.31.87

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Summary:本研究では,開発途上国における農業技術普及の現場を対象として,一年生換金作物を選定する際の経営者の主体的な意思決定過程を階層分析法(Analytical Hierarchy Process:AHP)により検討するにあたり,調査対象となる多くの経営者から首尾一貫した一対比較の結果が得られないという問題点を解決するために,多面的な情報利用の方法を提案することを目的とする.具体的に,通常のAHPの方法では,一対比較の中に比較しづらい要素のペアが存在する,あるいは,分析対象となる要素数により一対比較の総数が膨大になるなど,調査対象となる経営者の回答時の負担が大きくならざるを得なかった.そして,このような状況下で経営者が行った完全一対比較の結果を信頼性指数によって評価した場合,推移性規則が満たされない要素間の評価が含まれるなどのために,分析に利用可能な標本の大きさが相対的に小さくならざるを得ないという問題が存在した.そこで,コートジボワール中部地域のベリエ州に位置するZ村を対象とした技術導入に関する農家の意思決定分析を事例として,通常のAHPの適用によって最終的に小さくならざるを得なかった標本の再拡大を目的とした不完全一対比較の適用によるAHPウェイトの再計算とそれによる信頼性指数の再評価を実施した.また,その結果を用いた技術導入の意思決定要因分析の実用性について,完全一対比較の結果と不完全一対比較の結果を用いた分析内容間の比較検討を行った.
ISSN:0916-9482
1881-5219
DOI:10.3173/air.31.87