高齢者における椎体変形が姿勢、運動機能に及ぼす影響

【はじめに】 椎体変形を有する高齢者では、椎体にかかる荷重バランスが増大し、続発性の骨折が生じやすくなることやQuality of Life(QOL)が低下すること、そして死亡率が高まることが報告されている。しかし、無症候性の場合が多い椎体変形は、その存在を認識されにくいこともあり、姿勢、運動機能への影響に関しての報告は少ない。そこで、本研究は、椎体変形を有する数により筋力、バランス機能、歩行速度、脊柱可動性、脊椎後弯角、脊柱の傾斜、過去の転倒歴の有無に差があるかどうかを検討した。 【対象と方法】 腰背部痛を有する患者103名(75.2±8.2歳)を対象とした。椎体変形を有する数により椎体変形...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2008; p. 54
Main Authors 三川, 浩太郎, 大田, 八重美, 木村, 和也, 村上, 史八, 藤本, 春菜, 本田, 俊介, 加島, 真理, 井田, 貴之, 尾崎, 淳子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2008
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2008.0.54.0

Cover

More Information
Summary:【はじめに】 椎体変形を有する高齢者では、椎体にかかる荷重バランスが増大し、続発性の骨折が生じやすくなることやQuality of Life(QOL)が低下すること、そして死亡率が高まることが報告されている。しかし、無症候性の場合が多い椎体変形は、その存在を認識されにくいこともあり、姿勢、運動機能への影響に関しての報告は少ない。そこで、本研究は、椎体変形を有する数により筋力、バランス機能、歩行速度、脊柱可動性、脊椎後弯角、脊柱の傾斜、過去の転倒歴の有無に差があるかどうかを検討した。 【対象と方法】 腰背部痛を有する患者103名(75.2±8.2歳)を対象とした。椎体変形を有する数により椎体変形が無い群を正常群、椎体変形が1~3個存在する群を椎体変形少数群(少数群)、4つ以上存在する群を椎体変形多数群(多数群)とし、正常群、少数群、多数群の3群に分類し比較検討した。筋力は、握力計を用い利き手の握力を測定した。バランス機能の指標として片脚立位保持時間を測定した。歩行速度は、10m全力歩行時間を測定した。胸椎後弯角、腰椎前弯角、脊柱の傾斜、脊柱可動性の測定は、スパイナルマウス(Index社製)を用いて測定した。また、脊柱の傾斜は、スパイナルマウスで測定できる立位中間位での鉛直線に対する全脊柱の傾きとした。転倒歴は、過去の1年間における転倒の有無を対象者より聴取した。椎体変形の数は、単純レントゲン写真を読影し形態計測法で椎体の前方(A)、中央(C)、後方(P)を計測し、今回は、Genantらの分類に従い、A/P比およびC/P比が0.8以下の椎体を椎体変形有りとした。なお、単純レントゲン写真の撮影は、診療および治療目的で医師の指示のもと放射線技師によって撮影された。統計解析は、椎体変形の数を要因とする一元配置分散分析と多重比較にて解析した。 【結果】 正常群(22名)、少数群(54名)、多数群(27名)の3群間を比較し、有意差を認めた項目は、 1.正常群と少数群との間においては、胸椎後弯角、脊柱可動性だった(p<0.05)。 2.少数群と多数群との間においては、身長、胸椎後弯角だった(p<0.05)。 3.正常群と多数群との間においては、身長、胸椎後弯角、歩行速度、片脚立位保持時間、脊柱可動性、脊柱の傾斜だった(p<0.05)。 4.転倒歴に関して、正常群は9%、 本研究の結果において、正常群に比べ多数群は、身長低下、胸椎の後弯増強、歩行速度、バランス機能および脊柱可動性の低下、重心が前方変位していることと、椎体変形を有する数が増加すると、より身長の低下、胸椎の後弯増強、そして転倒リスク増加につながることが推測された。椎体変形が姿勢、運動機能に及ぼす影響を理解し、適切に対処することが転倒予防につながる可能性が示唆された。
Bibliography:54
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2008.0.54.0