移植後貧血の治療戦略 -HIF-PH阻害剤について

HIF-PH阻害剤は移植後貧血の新たな治療戦略の一つである。近年日本腎臓学会より、HIF-PH阻害剤使用に関するrecommendationが発表され1)、特に、鉄欠乏による血栓症リスクが強調されており、HIF-PH阻害剤投与中において、血清フェリチン100ng/ml未満、またはトランスフェリン飽和度 (TSAT) 20%未満で鉄の補充療法を迅速に行うことがすすめられている他、悪性腫瘍・網膜病変・肝障害・高血圧・高カリウム・血管石灰化など多岐にわたる項目について、注意喚起がなされている。このような指針をうけて、日本臨床腎移植学会においても、HIF-PH阻害剤使用に関する注意喚起が発表され2)、...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s232_2
Main Author 小口, 英世
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s232_2

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Summary:HIF-PH阻害剤は移植後貧血の新たな治療戦略の一つである。近年日本腎臓学会より、HIF-PH阻害剤使用に関するrecommendationが発表され1)、特に、鉄欠乏による血栓症リスクが強調されており、HIF-PH阻害剤投与中において、血清フェリチン100ng/ml未満、またはトランスフェリン飽和度 (TSAT) 20%未満で鉄の補充療法を迅速に行うことがすすめられている他、悪性腫瘍・網膜病変・肝障害・高血圧・高カリウム・血管石灰化など多岐にわたる項目について、注意喚起がなされている。このような指針をうけて、日本臨床腎移植学会においても、HIF-PH阻害剤使用に関する注意喚起が発表され2)、特に悪性腫瘍リスクについて、移植後長期例における悪性腫瘍の頻度の増加も考慮し、HIF-PH阻害剤導入前の悪性腫瘍スクリーニング及び、特にリスクが高い腎臓癌において、治療開始後の定期検査がすすめられている。近年の腎移植レシピエントの死因として、不明例などを除けば、悪性腫瘍が15.7%と第一位の死亡原因として挙げられており3)、注意を要する。HIF-PH阻害剤は移植後貧血の新たな治療戦略の一つではある一方で、治療導入前後での、悪性腫瘍・鉄補充・眼病変の検索など、よりきめ細やかに注意深く経過を観察する診療姿勢が求められる。参考文献1) 日本腎臓学会誌 2020; 62 (7): 711-7162) http://www.jscrt.jp/wp-content/themes/jscrt/pdf/hif_ph_recommendation.pdf3) 腎移植臨床登録集計報告 (2021) 2020年実施症例の集計報告と追跡調査結果 日本臨床腎移植学会・日本移植学会
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s232_2