当院における生体肝移植後ドナー外来の現状と肝提供後変化の検討

はじめに:当院では肝移植ドナーに対し、定期的な外来診療を継続している。ドナー外来の現状と肝提供後の変化につき検討した。対象と方法:当院で肝提供手術を受けた314名のうち、2011年から2021年の173名を対象とした。術後1、3、6か月、1年、以後1年毎の受診時に行う血算、肝・腎機能を含む血液検査、画像検査の結果を解析した。脂肪肝は単純CTで肝臓のCT値が40HU以下、脾臓のCT値より10HU以上低下、肝臓/脾臓のCT値1未満、あるいはFibroScan®でCAP280 dB/m以上と定義した。結果:ドナー年齢の中央値は39歳(IQR, 30-52)で女性が84例。複雑な解剖や上腹部開腹手術の...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s380_2
Main Authors 原, 貴信, 松本, 亮, 福本, 将之, 江口, 晋, 日高, 匡章, 曽山, 明彦, 足立, 智彦, 松島, 肇, 今村, 一歩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s380_2

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Summary:はじめに:当院では肝移植ドナーに対し、定期的な外来診療を継続している。ドナー外来の現状と肝提供後の変化につき検討した。対象と方法:当院で肝提供手術を受けた314名のうち、2011年から2021年の173名を対象とした。術後1、3、6か月、1年、以後1年毎の受診時に行う血算、肝・腎機能を含む血液検査、画像検査の結果を解析した。脂肪肝は単純CTで肝臓のCT値が40HU以下、脾臓のCT値より10HU以上低下、肝臓/脾臓のCT値1未満、あるいはFibroScan®でCAP280 dB/m以上と定義した。結果:ドナー年齢の中央値は39歳(IQR, 30-52)で女性が84例。複雑な解剖や上腹部開腹手術の既往を除く165例で上腹部正中切開ハイブリッド手術を行っていた。拡大左葉グラフト109例、右葉58例、後区域4例、外側区域2例。外来観察期間の中央値は28.2か月(IQR, 11.5-61.7)。Dropout率は女性(50vs28%, p< 0.01)、レシピエント死亡例(51vs34%, p=0.03)で有意に高くなっていた。術後3か月時点で肝逸脱酵素上昇が遷延していたのが21例あり、右葉グラフト症例で有意に多かった(25vs6%, p=0.01)が、全例術後1年のうちに正常化した。術後の脂肪肝は10例に認め(診断時年齢中央値46歳)、術前にダイエットを要した症例で有意に多くなっていた(33vs4%, p=0.01)。また、術後に血小板数が基準値以下で推移しているのが32例あり、50歳以上(p=0.03)、女性(p=0.03)、右葉グラフト(p <0.01)で有意に多かった。結語:背景が健康な生体ドナーでも肝提供後の脂肪肝を6%に、血小板低下を18%に認める。レシピエント死亡など足が遠のく要素はあるが、可能な限り継続して観察が必要である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s380_2