4剤維持併用免疫抑制療法下に生じた腎移植後アデノウイルス膀胱炎の1例
症例は40代、男性。実母をドナーとした血液型一致先行的腎移植を施行した。免疫抑制剤はTACER/MMF/MP/basiliximabの4剤で導入し、POD7からEVRを1.5mg/dayで開始した。sCrは1.14 mg/dlまで低下し、経過良好であった。POD14に38℃台の発熱、排尿時痛を認め、尿路感染症としてABPCの投与を開始した。しかし尿培養は陰性であった。症状は改善なく、また血膿尿の増悪、sCrの軽度上昇を認めたため、POD20にアデノウイルス迅速検査を提出したところ、陽性であった。同日施行した移植腎生検では、拒絶反応を示唆する所見を認めなかった。MMFを減量しLVFXを開始したが...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s274_1 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s274_1 |
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Summary: | 症例は40代、男性。実母をドナーとした血液型一致先行的腎移植を施行した。免疫抑制剤はTACER/MMF/MP/basiliximabの4剤で導入し、POD7からEVRを1.5mg/dayで開始した。sCrは1.14 mg/dlまで低下し、経過良好であった。POD14に38℃台の発熱、排尿時痛を認め、尿路感染症としてABPCの投与を開始した。しかし尿培養は陰性であった。症状は改善なく、また血膿尿の増悪、sCrの軽度上昇を認めたため、POD20にアデノウイルス迅速検査を提出したところ、陽性であった。同日施行した移植腎生検では、拒絶反応を示唆する所見を認めなかった。MMFを減量しLVFXを開始したが、30回以上/日の頻尿となり、sCrもさらに上昇したため、POD23にMMFを休薬した。γグロブリンとグリチルリチン製剤も開始した。sCrはPOD31に3.37 mg/dlまで上昇したため、再度移植腎生検を施行したが、拒絶反応、ウイルス腎症を示唆する所見は認めなかった。その後は自覚症状が徐々に改善、sCrも低下に転じ、POD45でsCr 1.80mg/dlまで改善し、MMFは休薬のまま退院とした。外来でPOD62にMMFを再開した。現在移植後3か月でsCr 1.62mg/dlまで低下し、経過は良好である。腎移植後アデノウイルス感染症では免疫抑制剤の減量を要するが、結果として約40%に拒絶反応が合併する。本症例ではEVR併用により安全にMMFの休薬が可能であり、拒絶反応を発症することなくアデノウイルス感染症の治療が可能であった。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s274_1 |