肺移植レシピエントに発症したCOVID-19の経験

COVID-19流行初期の報告によると,肺移植患者に発症したCOVID-19の重症化率は約30%と一般集団よりも高く,致死率も10-40%と予後不良である.当院で肺移植後フォロー中にCOVID-19と診断された3例を報告する.【症例1】39歳男性.脳死右肺移植後10年.COVID-19流行第Ⅲ波の際に濃厚接触者となり,軽度の咳嗽を認めPCR検査で陽性と診断された.入院後にシクレソニド吸入とPSLの増量で加療され,8日後に退院した.1ヶ月後に発熱と咳嗽,右肺の広範なスリガラス影を認めたため再入院し,ステロイドパルス療法により改善した.COVID-19罹患後の急性拒絶反応が疑われる症例であった.【...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s143_1
Main Authors 松原, 慧, 岡﨑, 幹生, 田中, 真, 清水, 大, 杉本, 誠一郎, 橋本, 好平, 諏澤, 憲, 豊岡, 伸一, 氏家, 裕征, 山本, 寛斉, 川名, 伸一, 三好, 健太郎, 久保, 友次郎, 枝園, 和彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s143_1

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Summary:COVID-19流行初期の報告によると,肺移植患者に発症したCOVID-19の重症化率は約30%と一般集団よりも高く,致死率も10-40%と予後不良である.当院で肺移植後フォロー中にCOVID-19と診断された3例を報告する.【症例1】39歳男性.脳死右肺移植後10年.COVID-19流行第Ⅲ波の際に濃厚接触者となり,軽度の咳嗽を認めPCR検査で陽性と診断された.入院後にシクレソニド吸入とPSLの増量で加療され,8日後に退院した.1ヶ月後に発熱と咳嗽,右肺の広範なスリガラス影を認めたため再入院し,ステロイドパルス療法により改善した.COVID-19罹患後の急性拒絶反応が疑われる症例であった.【症例2】53歳女性.脳死両肺移植後3年半.第V波の際に発熱と下痢,嗅覚・味覚障害を認めCOVID-19と診断された.入院後,MMFの中止とレムデシビル投与,カシリビマブ/イムデビマブによる中和抗体療法により軽快したため14日後に退院した.【症例3】45歳男性.米国での脳死両肺移植後27年.慢性移植肺機能不全で加療中,第V波の際に妻がCOVID-19に罹患したため,PCR検査を施行され陽性と診断された.入院後に中和抗体療法を施行され10日後に退院した.症例2と3では,COVID-19軽快後の呼吸機能低下や画像上の変化は認められなかった.肺移植後のCOVID-19でも早期診断と早期治療により良好な予後が期待できるため,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s143_1