生体肝移植術中の脾臓摘出術が短期・長期予後に与える影響
背景:生体肝移植術中の脾臓摘出術は、術後の過剰門脈血流によるsmall-for-size syndrome予防、脾機能亢進による血小板減少改善などを目的とし施行されることが多いが、未だ適応は標準化されておらず短期・長期予後への影響も一定の見解を得ていない。方法:当院で2000年10月から2022年11月の間に成人生体肝移植を施行した症例のうち、移植前脾摘、再移植、ドミノ移植症例を除いた335例を、術中脾臓摘出群 82例(脾摘群)と併施しなかった 253 例(非脾摘群)に分類、後方視的に検討した。結果:男性155名、女性180名、年齢中央値55歳、現病はC型肝硬変が87例と最多で、急性肝不全37...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s208_2 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s208_2 |
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Summary: | 背景:生体肝移植術中の脾臓摘出術は、術後の過剰門脈血流によるsmall-for-size syndrome予防、脾機能亢進による血小板減少改善などを目的とし施行されることが多いが、未だ適応は標準化されておらず短期・長期予後への影響も一定の見解を得ていない。方法:当院で2000年10月から2022年11月の間に成人生体肝移植を施行した症例のうち、移植前脾摘、再移植、ドミノ移植症例を除いた335例を、術中脾臓摘出群 82例(脾摘群)と併施しなかった 253 例(非脾摘群)に分類、後方視的に検討した。結果:男性155名、女性180名、年齢中央値55歳、現病はC型肝硬変が87例と最多で、急性肝不全37例、アルコール性35例が続いた。術中出血量、手術時間は脾摘群、非脾摘群でそれぞれ9233ml・4583ml(p<0.05)、839分・785分(p<0.05)、脾臓摘出に起因する術後膵液瘻を3例(3.6%)に認めた。GRWR中央値は脾摘群0.85、非脾摘群0.84(p=0.40)であり、在院死亡率は脾摘群7.3%(6/82)、非脾摘群7.1%(18/253)(p=0.95)、術後1年・5年生存率は脾摘群:91.4%・83.6%、非脾摘群:87.5%・79.5%であった (p=0.40)。考察:脾摘群で有意に術中出血量増加と手術時間延長を認め、手技の定型化、エナジーデバイス導入などにより改善の余地がある。全体では脾摘の有無は長期予後に影響しなかったが、移植前の門脈圧亢進症の程度やグラフト肝のサイズ・質を勘案した上で脾摘の適応を確立することが急務である。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s208_2 |