メディアの効用認識とモラールの関連性―メディアは「幸福な老い」に寄与するか

シニア層のメディア利用についての研究の多くが,社会や他者とつながろうとする動機が彼らのメディア利用を促進していると主張し,メディア利用と「幸福な老い」にはポジティブな関係があることを示唆してきた。本研究は,「利用と満足研究」の視点と方法に基づき,シニア層のメディア効用と「幸福な老い」との関係を明らかにするものである。東京近郊で実施した調査(n=1,644)の結果,ほとんどのメディア効用はモラールに寄与しておらず,とりわけテレビの消費的効用とモラールは一貫してネガティブな関係にあることが示された。つまり,モラールの低い人ほどテレビの消費的効用を高く認識しているということであり,シニア層のテレビ利...

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Published in社会情報学 Vol. 7; no. 3; pp. 63 - 76
Main Author 小寺, 敦之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 社会情報学会 30.06.2019
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ISSN2187-2775
2432-2148
DOI10.14836/ssi.7.3_63

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Summary:シニア層のメディア利用についての研究の多くが,社会や他者とつながろうとする動機が彼らのメディア利用を促進していると主張し,メディア利用と「幸福な老い」にはポジティブな関係があることを示唆してきた。本研究は,「利用と満足研究」の視点と方法に基づき,シニア層のメディア効用と「幸福な老い」との関係を明らかにするものである。東京近郊で実施した調査(n=1,644)の結果,ほとんどのメディア効用はモラールに寄与しておらず,とりわけテレビの消費的効用とモラールは一貫してネガティブな関係にあることが示された。つまり,モラールの低い人ほどテレビの消費的効用を高く認識しているということであり,シニア層のテレビ利用に対する従来の見方が過度に楽観的であったことを示唆するものとなった。また,「利用と満足研究」は,社会との関わりの減少が機能的代替としてのメディア利用を促進するとの仮説を有しているが,リタイア者のメディア効用が「幸福な老い」に大きく寄与している証拠も見出せなかった。これはリタイアによって失われた社会活動をメディアが補完するという従来の考え方に異議を唱えるものである。メディア利用に関する調査研究では,老年期の社会適応について活動理論を支持するものが多いが,本研究はこれに否定的な見解を示すものとなっている。
ISSN:2187-2775
2432-2148
DOI:10.14836/ssi.7.3_63