肝細胞と脂肪由来幹細胞の共移植による移植肝細胞生着促進効果

背景:肝細胞移植は肝臓移植の代替療法として期待されているが、移植肝細胞の生着効率が極めて低いという問題点がある。肝細胞移植と類似性の高い膵島移植において、脂肪由来幹細胞(ADSC)の共移植が膵島の生着を促進させることが知られている。そこで今回、肝細胞移植においてADSCの共移植が肝細胞の生着に及ぼす効果を検討した。方法:肝細胞とADSCはF344ラットから分離した。in vivoモデルでは、レシピエントとして無アルブミンF344ラットを使用し、血清アルブミン値の測定により肝細胞の生着を評価した。ADSCの共移植が及ぼす効果を検討するため、肝細胞とADSCを腎被膜下および門脈に共移植し肝細胞の生...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s308_1
Main Authors 西牧, 宏泰, 猪村, 武弘, 稲垣, 明子, 亀井, 尚, 海野, 倫明, 宮城, 重人, 後藤, 昌史, 大橋, 一夫, 中村, 保宏, 片野, 匠, 山名, 浩樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s308_1

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Summary:背景:肝細胞移植は肝臓移植の代替療法として期待されているが、移植肝細胞の生着効率が極めて低いという問題点がある。肝細胞移植と類似性の高い膵島移植において、脂肪由来幹細胞(ADSC)の共移植が膵島の生着を促進させることが知られている。そこで今回、肝細胞移植においてADSCの共移植が肝細胞の生着に及ぼす効果を検討した。方法:肝細胞とADSCはF344ラットから分離した。in vivoモデルでは、レシピエントとして無アルブミンF344ラットを使用し、血清アルブミン値の測定により肝細胞の生着を評価した。ADSCの共移植が及ぼす効果を検討するため、肝細胞とADSCを腎被膜下および門脈に共移植し肝細胞の生着を評価した。ADSCの移植部位が及ぼす影響を検討するため、両細胞が直接接触しないよう左右の腎臓被膜下に分けて移植し肝細胞の生着を評価した。in vitroモデルを用いて作用機序の検討を行った。まず肝細胞とADSCを共培養しADSCが肝細胞の機能に及ぼす影響を評価し、肝細胞とADSCの共培養上清を解析し肝細胞に影響する因子を同定し、その上で候補因子に対する中和抗体を用いた阻害試験を施行した。結果:腎被膜下移植および門脈移植モデルの血清アルブミン値は、肝細胞単独移植群と比較してADSC共移植群で有意に高値を示した(p<0.001、p<0.001)。両細胞を左右の腎被膜下に分けて移植した群では血清アルブミン濃度が有意に低下した(p<0.001)。in vitroモデルでは、肝細胞とADSCの共培養により肝細胞の機能が向上する事が示された。肝細胞とADSCの共培養上清を解析したところ、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン-6(IL-6)が肝細胞機能を向上させる因子の候補と考えられ、上記3因子の中和抗体を用いた阻害試験でADSCの肝細胞機能向上効果が抑制された(p<0.01)。結論:本研究により、ADSCの共移植が移植肝細胞の生着を向上させることが明らかになった。この促進効果は、肝細胞とADSCが近接した場合にのみ見受けられ、ADSCから分泌されるHGF、VEGF、IL-6が関与していると推察された。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s308_1