プールリハにおける運動評価とその効果について

【はじめに】  著しい高次脳機能障害のために訓練意欲の無い症例に対してプールリハ(水中治療)を行い、陸上では観察困難であった身体機能の評価が可能となり、陸上でアプローチにフィードバックすることで良好な結果を得られたのでここに報告する。 【症例及び経過】  70歳代女性。平成21年2月5日に心原性脳梗塞を発症、重度の高次脳機能障害(発動性・観念運動失行(立位・歩行)認知症)を呈した。3月19日より当院にリハ目的で転院。転院時評価では、従命困難、訓練意欲が無く、立ち上がり・立位・歩行は可能であるがリハビリに対して強い拒否を示していた。4月上旬の時点で立位をとる事は全く無くなり、廃用による身体機能の...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2009; p. 69
Main Authors 横山, 信彦, 仲川, 純代, 村山, 健一郎, 尾田, 憲彦, 力丸, 伸樹, 緒方, 陽一郎, 井手, 泰之, 古田, 大, 沖園, 秀次, 呉, 聖能
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2009
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2009.0.69.0

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Summary:【はじめに】  著しい高次脳機能障害のために訓練意欲の無い症例に対してプールリハ(水中治療)を行い、陸上では観察困難であった身体機能の評価が可能となり、陸上でアプローチにフィードバックすることで良好な結果を得られたのでここに報告する。 【症例及び経過】  70歳代女性。平成21年2月5日に心原性脳梗塞を発症、重度の高次脳機能障害(発動性・観念運動失行(立位・歩行)認知症)を呈した。3月19日より当院にリハ目的で転院。転院時評価では、従命困難、訓練意欲が無く、立ち上がり・立位・歩行は可能であるがリハビリに対して強い拒否を示していた。4月上旬の時点で立位をとる事は全く無くなり、廃用による身体機能の低下が進行した。このため4月15日プールリハ開始。水中内では支持無しで立位保持可能であった。両股・膝関節は軽度屈曲、重心は基底面内にあり、体幹はやや屈曲傾向。波による外乱に対し、対応できたことより立ち直り反応は残存、保護伸展反射は過反射の状態と判断した。また、見守りで5m程度の歩行が可能であった。  水中での運動評価を基にimpairmentレベルの問題点が特定できた。陸上での訓練は、腹臥位での体幹・下肢屈筋群の伸張やkneelingでの体幹伸展訓練及びバランス訓練などを導入するに至った。このように、水中と陸上での評価・訓練を併用することで立位・歩行が改善し、伝い歩きや歩行器歩行が可能となった。 【考察】  本症例では、陸上で評価できなかった身体機能が水中で可能になったことで、陸上での訓練を再構築でき、立位・歩行が可能となった。陸上と異なり、水中では浮力・水圧により体幹支持が容易となるなど身体周囲の運動環境を大きく変化させることが可能である。それによって残存能力を引き出し、impairmentレベルでの問題点の特定が可能となったと考える。さらに、水中では波による予測できない外乱に対して立位保持や歩行を行うことで無意識下での姿勢制御を誘発する。これが身体イメージの再構築にも有効と考える。 【まとめ】  高次脳機能障害のために訓練意欲が低く、一般的なリハ室での訓練もしくは病棟でのADL訓練が行えない症例に対して、水中での評価・訓練を行うことで、陸上では観察困難な機能的評価が可能となる。さらに、身体イメージの再構築を促進する効果もあると考える。
Bibliography:069
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2009.0.69.0