肩腱板断裂術前後のSF-36v2の推移とそれに関連する因子の検討
【目的】 当院では肩腱板断裂手術例に対して術前後にSF-36v2を用いてQOLを調査している.術後8週目での達成目標を身辺動作自立での自宅復帰としている.今回,術前と術後8週目のSF-36v2の点数推移とそれに関連する因子を検討したので報告する. 【方法】 対象は2010年3月から2011年1月までに肩腱板断裂と診断され,当院にて鏡視下腱板修復術(以下ARCR)を施行した58例中,術後8週まで経過を追えた29例29肩(男性20例20肩・女性9例9肩)である.平均年齢は67.3歳.これらの対象者に,術前と術後8週目に, 健康関連QOL尺度であるSF-36v2,肩関節可動域測定,疼痛検査を実施...
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Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2011; p. 80 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2011
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu |
Subjects | |
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ISSN | 0915-2032 2423-8899 |
DOI | 10.11496/kyushuptot.2011.0.80.0 |
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Summary: | 【目的】 当院では肩腱板断裂手術例に対して術前後にSF-36v2を用いてQOLを調査している.術後8週目での達成目標を身辺動作自立での自宅復帰としている.今回,術前と術後8週目のSF-36v2の点数推移とそれに関連する因子を検討したので報告する. 【方法】 対象は2010年3月から2011年1月までに肩腱板断裂と診断され,当院にて鏡視下腱板修復術(以下ARCR)を施行した58例中,術後8週まで経過を追えた29例29肩(男性20例20肩・女性9例9肩)である.平均年齢は67.3歳.これらの対象者に,術前と術後8週目に, 健康関連QOL尺度であるSF-36v2,肩関節可動域測定,疼痛検査を実施した.肩関節可動域測定は,背臥位で他動・自動屈曲・他動外転・他動2nd外旋可動域,坐位で自動屈曲可動域を日本整形外科学会の方法に基づいて測定した.疼痛の評価には,Visual Analog Scale(以下VAS)を用い,疼痛の種類は運動時痛とした. SF-36v2は記述式のアンケートで,そこで得られた得点を国民標準値に基づいたスコアリング法(Norm based Scoring,以下NBS)で割り出した.得点は身体機能(以下PF),日常役割機能・身体(以下RP),体の痛み(以下BP),社会生活機能(以下SF),全体的健康感(以下GH),活力(以下VT),日常役割機能・精神(以下RE),心の健康(以下MH)の8項目に分類して算出した.各項目の術前と術後8週目の変化を対応のあるt検定を用いて検討した.また, SF-36v2の推移と肩関節可動域及び疼痛の関連性を,Pearsonの相関分析を用いて検討した. 【説明と同意】 対象者にはその趣旨を十分に説明した上で同意を得た.また,本研究は当院の倫理委員会による承認を得た上で実施した. 【結果】 SF-36v2は,術前に対し術後8週目でRP,RE,SFが有意に低値を示す傾向にあった(P<0.05).また, SF-36v2の各項目の術前・術後8週目の変化と術前・術後8週目の肩関節可動域,疼痛の変化には関連性が認められなかった. 【考察】 RPとREは仕事や日常生活の制限に関与する項目であり,術後8週目での調査が入院中や退院後早期であったことが活動性の制限となり低値を示す結果になったと考えられる.SFは社会生活における他者や社会との関わりに関与する項目であり,前記同様の理由で制限され低値を示したと推測される.特に,今回の検討では,RP,RE,SFが有意に低値を示した.3項目の特性より,術後8週目では入院生活による活動性の制限が症例のQOLの低下に関与している事が示唆された.今後はSF-36 v2を用いて,長期的な経過も追っていきたい. |
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Bibliography: | 080 |
ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2011.0.80.0 |