立位アライメント異常による腰痛を呈した症例

【はじめに】腰痛に対する治療法は様々であり、近年では体幹深部機能へアプローチし、脊柱・骨盤の機能改善を行う治療法が注目をあびている。しかし、腰痛は日常生活場面での異常姿勢・動作などから起因することが多く、その原因を追及、考察し効果的なアプローチを同時に行っていくことが重要である。今回、本症例の主訴である腰痛に対し、脊柱・骨盤機能へアプローチし、矢状面での静止立位アライメント改善による疼痛の軽減に至った症例を経験した。本症例における理学療法を行う上での視点、実際について報告する。 【症例紹介】性別:男性 年齢:24歳 診断名:第5腰椎・第1仙椎間腰椎椎間板ヘルニア 現病歴:1年前より誘引なく腰痛...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2005; p. 52
Main Authors 斉藤, 直人, 木藤, 伸宏, 本山, 達夫, 川嶌, 眞人, 永津, 義竜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2005
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2005.0.52.0

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Summary:【はじめに】腰痛に対する治療法は様々であり、近年では体幹深部機能へアプローチし、脊柱・骨盤の機能改善を行う治療法が注目をあびている。しかし、腰痛は日常生活場面での異常姿勢・動作などから起因することが多く、その原因を追及、考察し効果的なアプローチを同時に行っていくことが重要である。今回、本症例の主訴である腰痛に対し、脊柱・骨盤機能へアプローチし、矢状面での静止立位アライメント改善による疼痛の軽減に至った症例を経験した。本症例における理学療法を行う上での視点、実際について報告する。 【症例紹介】性別:男性 年齢:24歳 診断名:第5腰椎・第1仙椎間腰椎椎間板ヘルニア 現病歴:1年前より誘引なく腰痛出現。その後、右殿部痛、右下肢痺れ、右下腿外側部痛出現、平成17年2月18日当院受診し、保存治療目的にて入院となる。 【初期評価】X線・MRI所見:立位矢状面でのFlat腰椎。骨盤前傾減少、第5腰椎・第1仙椎間の髄核の脱出がみられる。疼痛:立位保持約1分程で右上後腸骨棘下部・下腿外側後方部に出現。Visual Analogue Scale(以下VAS)は、7/10。右下腿外側後方部に軽度痺れあり。関節可動域(右/左):股関節屈曲110/105、SLR 55/70。右SLRでは下腿後面に神経症状出現。徒手筋力検査(右/左):腸腰筋4/4+。両側測定時の腰椎後弯、骨盤後傾代償動作がみられる。右左脊柱起立筋腰椎部の筋緊張亢進(右<左)。矢状面での静止立位アライメント:上半身重心前方偏位、腰椎前弯減少、骨盤の前方偏位、骨盤前傾減少(右>左)、股関節伸展位。 【臨床指標と理学療法アプローチ】本症例は異常姿勢による下位脊柱起立筋のストレスの増加により、右上後腸骨棘下部の疼痛が出現したと考えた。よって、矢状面での静止立位アライメントを臨床指標として、骨盤前後傾中間位・腰椎前弯を改善する為に、股関節周囲、特に、股関節屈曲可動域運動、腸腰筋収縮運動を行った。脊柱・骨盤の安定性を高めることを目的として、腹部深部筋群の収縮運動を行った。 【結果】理学療法施行8週経過時点で効果判定のための評価を行った。静止立位時の疼痛は軽減した(VAS:4/10)。右下腿外側後方部の疼痛は変化なかった。関節可動域(右/左):SLR 60/75。矢状面における静止立位アライメントは、骨盤前方偏位・前後傾中間位への改善、腰椎前弯増加、股関節伸展は減少した。触診で静止立位時の下位脊柱起立筋の筋緊張は低下していた。 【まとめ】今回、本症例の疼痛の原因は、立位アライメント異常に要因があると考えアプローチした結果、アライメントの改善がみられ、下位脊柱起立筋の筋緊張は低下し疼痛の軽減を図ることができた。このことより、腰痛に対して、日常の生活場面での異常姿勢から原因を追究し、アプローチしていくことが重要であると考える。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2005.0.52.0