移植医療の現状と理想

腎移植医療は、手術手技の確立や免疫抑制療法の進歩などにより発展を続けてきた。治療成績の向上、ABO不適合移植を含めた適応の拡大により、腎移植を希望する症例は増え続けている。また献腎移植ではドナーアクションプログラムなどを通して臓器提供の数、質を向上させてきた。これらは移植医療の黎明期から情熱をもって取り組んでこられた偉大な先人方からの賜り物と考える。 移植医療を取り巻く環境が整ってきている一方で、移植医の不足や疲弊が問題となっている。新潟大学の医学生、研修医にアンケートを行ったところ、臓器移植に興味を持ち移植医療に関わってみたいと考える者は一定数いることがわかった。同時に将来診療科を選択する際...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 55; no. Supplement; p. 210_2
Main Authors 池田, 正博, 田崎, 正行, 齋藤, 和英, 冨田, 善彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2020
The Japan Society for Transplantation
Online AccessGet full text
ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.55.Supplement_210_2

Cover

More Information
Summary:腎移植医療は、手術手技の確立や免疫抑制療法の進歩などにより発展を続けてきた。治療成績の向上、ABO不適合移植を含めた適応の拡大により、腎移植を希望する症例は増え続けている。また献腎移植ではドナーアクションプログラムなどを通して臓器提供の数、質を向上させてきた。これらは移植医療の黎明期から情熱をもって取り組んでこられた偉大な先人方からの賜り物と考える。 移植医療を取り巻く環境が整ってきている一方で、移植医の不足や疲弊が問題となっている。新潟大学の医学生、研修医にアンケートを行ったところ、臓器移植に興味を持ち移植医療に関わってみたいと考える者は一定数いることがわかった。同時に将来診療科を選択する際には、やりがいや学問的な興味を重視するが、専門に特化することや長時間の勤務は避けられる傾向があった。移植医療を次世代につなぐためには、移植に特化した少数のスペシャリストの育成だけではなく、多くの医師やコメディカルが参入しやすいように配慮する必要がある。当科ではザブスペシャリティに関わらず移植手術や術後管理ができるように指導体制を整えている。そのため長時間勤務になりやすい献腎移植でも、臓器摘出、移植手術などチームを分けることができ、各々の負担が軽減できる。脳死下提供の増加により多臓器提供の機会が多くなっており、負担軽減のために臓器や移植施設の垣根を越えて取り組んでいく必要があると考える。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.55.Supplement_210_2