腎移植後高LDL血症に対するPCSK9阻害薬の使用経験

【緒言】免疫抑制療法により脂質代謝異常は助長され、多くの例で腎移植後にスタチン製剤を要するが、その投与量には限界がある。今回、LDL受容体リサイクルを促進させ著明なLDLコレステロール(LDL-C)低下作用を有するPCSK9阻害薬を使用した症例について、その安全性と有効性を報告する。【対象】腎移植後、当科で継続して経過観察中の症例で、スタチン効果不十分な高LDL血症に対してPCSK9阻害薬であるEvolocumabないしはAlirocumabを投薬した例を対象に、LDL-C値の推移を主とし、移植腎機能や有害事象につき観察検討した。【結果】平均年齢47歳、男女比10:3の13例に対し、Evolo...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 55; no. Supplement; p. 389_2
Main Authors 芳賀, 泉, 阿佐美, 健吾, 中村, 篤司, 高山, 哲郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2020
The Japan Society for Transplantation
Online AccessGet full text
ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.55.Supplement_389_2

Cover

More Information
Summary:【緒言】免疫抑制療法により脂質代謝異常は助長され、多くの例で腎移植後にスタチン製剤を要するが、その投与量には限界がある。今回、LDL受容体リサイクルを促進させ著明なLDLコレステロール(LDL-C)低下作用を有するPCSK9阻害薬を使用した症例について、その安全性と有効性を報告する。【対象】腎移植後、当科で継続して経過観察中の症例で、スタチン効果不十分な高LDL血症に対してPCSK9阻害薬であるEvolocumabないしはAlirocumabを投薬した例を対象に、LDL-C値の推移を主とし、移植腎機能や有害事象につき観察検討した。【結果】平均年齢47歳、男女比10:3の13例に対し、Evolocumabを12例に、Alirocumabを1例に投与した。平均490.9日の観察期間内で継続投与しているのは11例で、13例全例で投薬後LDL-Cは著明に低下した(p=0.001)。投与前後のCNI濃度に変動はなく、治療1年後のCr値に有意な変化は認めなかった。糖尿病の増悪や新規発症もなく、投薬後のCVDイベントや新規拒絶反応も全例で認めなかった。【考察】腎移植後患者への投与報告がないPCSK9阻害薬だが、本観察では概ね有害事象なく、著明なLDL-C低下を得られた。PCSK9阻害薬が移植後の動脈硬化進行やCVDイベントの阻止に寄与できるか、更なる長期観察を検討している。 
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.55.Supplement_389_2