当院における大腿骨近位部骨折手術患者の術後在院日数に及ぼす因子の検討
【はじめに】近年、大腿骨近位部骨折患者の在院日数短縮へ向けた取り組みが重要視されている。在院日数に影響を及ぼす因子として、年齢や受傷前歩行能力などが報告されているが、術後早期の因子を含めた検討は殆ど行われていない。我々は先行研究において、術後在院日数(以下、在院日数)に影響を及ぼす因子について調査した。その結果、術後1週時点の排泄動作能力が在院日数に影響を与えることが明らかとなった。しかし、前述した先行研究は単変量解析での検討であり、多因子の影響を除外し独立した因子を抽出するために多変量解析を用いた検討が必要であると考えられる。本研究の目的は術前および術後1週時点に入手可能な情報から在院日数の...
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          | Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2016; p. 201 | 
|---|---|
| Main Authors | , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            九州理学療法士・作業療法士合同学会
    
        2016
     Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu  | 
| Subjects | |
| Online Access | Get full text | 
| ISSN | 0915-2032 2423-8899  | 
| DOI | 10.11496/kyushuptot.2016.0_201 | 
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| Summary: | 【はじめに】近年、大腿骨近位部骨折患者の在院日数短縮へ向けた取り組みが重要視されている。在院日数に影響を及ぼす因子として、年齢や受傷前歩行能力などが報告されているが、術後早期の因子を含めた検討は殆ど行われていない。我々は先行研究において、術後在院日数(以下、在院日数)に影響を及ぼす因子について調査した。その結果、術後1週時点の排泄動作能力が在院日数に影響を与えることが明らかとなった。しかし、前述した先行研究は単変量解析での検討であり、多因子の影響を除外し独立した因子を抽出するために多変量解析を用いた検討が必要であると考えられる。本研究の目的は術前および術後1週時点に入手可能な情報から在院日数の予測に影響を及ぼす因子を、多変量解析を用いて明らかにすることである。【方法と対象】対象は、H26年6月からH27年6月の期間で大腿近位部骨折を呈し、当院にて手術を施行し退院まで当院クリティカルパス・定期評価にて経過を追跡できた108名中、除外基準を通常術後荷重計画からの逸脱者、CCS固定法などの後述する2つの術式以外の術式、術後合併症の発生者としたうえで受傷前が在宅で且つ、歩行自立の53名(年齢79.3±8歳、女性38名)とした。平均在院日数は62.5±13日であり、施術内訳は人工骨頭置換術27例、骨接合術26例であった。在院日数に影響する因子を抽出する為に対象者については、年齢、術式、キーパーソン続柄(以下:K-P続柄)、認知症の有無、装具が必要な麻痺の有無、術後1週時点での歩行・移乗動作・排泄動作のFIMの8項目を調査した。その上で、在院日数と影響を及す因子を抽出する為、年齢、術後1週時点での歩行・移乗動作・排泄動作のFIMについては在院日数と相関分析を実施した。それ以外の項目は、術式(人工骨頭群と骨接合術群)、K-P続柄(配偶者群と配偶者以外群)、認知症の有無、装具が必要な麻痺の有無で2群間に分類し、在院日数を比較した。次に、在院日数を従属変数とし前述した相関分析と2群の差の検定でp<0.2の因子を独立変数とした重回帰分析(stepwise法)を行った(統計ソフトはR2.8.1を使用)。【結果】単変量解析の結果、術後1週時点での移乗動作・排泄動作、K-P続柄、術式、認知症の有無が独立変数として選択された。これらの独立変数を投入した重回帰分析の結果、在院日数に影響を及ぼす因子として術後1週時点での車椅子移乗動作(β=-0.559、P<0.001)のみが抽出された(P<0.001、R2=0.299)。【考察】本研究の結果、在院日数に影響を及ぼす因子として術後1週時点の移乗動作のFIMが抽出された。移乗動作の介助量が少ないことは、早期離床が容易であることや下肢筋力などを含めたその後の移動動作能力の回復に有利であることが推測され、転帰先調整に影響したと考えられた。在院日数予測については予測式の精度を示すR2値は0.3であった為、今回検討した因子のみで在院日数を予測するのは不十分と考えられる。この要因として、術後1週以降のマネージメントや今回検討していない因子が在院日数に影響を及すことが推測される為、今後は独立変数の調査時期・項目を再度検討した上での分析が必要であると考える。以上のことから術前及び術後1週時点に入手可能な情報から在院日数を予測することは困難であるが、術後1週時点の移乗動作のFIMが在院日数に影響を及ぼすことで早期離床が早期退院に繋がることが示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】【倫理的配慮】入院時に説明を行い、同意を得た場合に限り情報を使用した。また、本研究は、当院倫理委員会にて審査を受け承認を得ている(承認日平成27年9月18日)。本研究に関連し開示すべきCOIはありません。 | 
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| ISSN: | 0915-2032 2423-8899  | 
| DOI: | 10.11496/kyushuptot.2016.0_201 |