腰部脊柱管狭窄症患者のロコモ25におけるロコモ度3に関連する因子
【目的】日本整形外科学会は筋骨格系障害により、運動能力が低下する状態をロコモティブシンドローム(LS)と定義し、重症LSの早期発見と治療介入のために2020年にロコモ度3を定義した。腰部脊柱管狭窄症 (LSS)はLSの原因となる。そこで本研究は術前のLSS患者のロコモ度3に関連する因子を明らかにすることを目的とした。 【方法】当院入院したLSS患者127名を対象とした後ろ向き研究である。評価項目はロコモ25におけるロコモ度、Phase angle(PhA)、握力、歩行速度、Timed up and go test(TUG)、包括的QOL評価であるEQ-5Dを測定した。解析は、ロコモ度をロコモ度...
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Published in | Kyushu physical therapist Congress Vol. 2024; p. 102 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
2024
Kyushu Physical Therapy Association |
Subjects | |
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ISSN | 2434-3889 |
DOI | 10.32298/kyushupt.2024.0_102_1 |
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Summary: | 【目的】日本整形外科学会は筋骨格系障害により、運動能力が低下する状態をロコモティブシンドローム(LS)と定義し、重症LSの早期発見と治療介入のために2020年にロコモ度3を定義した。腰部脊柱管狭窄症 (LSS)はLSの原因となる。そこで本研究は術前のLSS患者のロコモ度3に関連する因子を明らかにすることを目的とした。 【方法】当院入院したLSS患者127名を対象とした後ろ向き研究である。評価項目はロコモ25におけるロコモ度、Phase angle(PhA)、握力、歩行速度、Timed up and go test(TUG)、包括的QOL評価であるEQ-5Dを測定した。解析は、ロコモ度をロコモ度2以下とロコモ度3の2群に分け、Wilcoxon順位和検定を用いて比較した。また、ロコモ度3を独立変数、年齢、性別、PhA、TUG、EQ-5Dを説明変数として名義ロジスティック解析を用いて解析した。 【結果】術前のLSS患者のうち、ロコモ度3の割合は82.7%であった。ロコモ度2以下とロコモ度3の群間比較では年齢(以下すべて中央値: 73.5 [68.5-77.0] vs 76.0 [71.0-80.0])、PhA(4.7 [4.3-5.1] vs 4.2 [3.9-4.6])、握力(31.0 [22.7-39.6] vs 21.3 [17.1-28.9])、歩行速度(1.4 [1.1-1.6] vs 0.9 [0.7-1.1])、TUG(7.4 [6.7-8.8] vs 10.7 [8.2-15.3])、EQ-5D(0.69 [0.65-0.77] vs 0.59 [0.50-0.65])で2群間に有意差を認めた(p<0.05)。ロコモ度3に関する名義ロジスティック解析の結果はPhAとEQ-5Dが独立変数として選択された (PhA; Odd’s=8.53, 95%CI:0.399-3.889, p<0.05, EQ-5D; Odd’s=3.69, 95%CI:10.539-33.521, p<0.05)。 【考察】先行研究において術前LSS患者のロコモ3の割合は約80%であり、本研究でのロコモ度3の割合は82.7%と先行研究と同等の有病率であった。既報では、術後に半数以上のLSS患者でロコモ度が改善しないことが報告されており、術前よりLSに陥らないための対策が必要と考える。また、ロコモ度2以下とロコモ度3の群間比較で身体機能はすべて有意差を認めたが歩行速度はロコモ度3群の中央値は0.9 m/秒であった。歩行速度は0.8 m/秒であれば屋外歩行が自立可能であり、LSに関しては握力やTUGの方がカットオフより低値であったため、歩行速度よりも筋力やバランス機能の改善が有用であると考える。さらにロコモ度3に影響を与える因子としてPhA、EQ-5Dが選択された。PhAは他の研究で筋力や活動量、栄養、QOLとの関連が報告されている。EQ-5Dは包括的なQOLの値であるため、LSの改善には多面的なアプローチが重要であり、ロコモ度の改善がQOLの改善につながると考える。 【結論】本研究においてLSSの術前患者におけるロコモ度3は体組成や身体機能、QOL等と関連を示した。当院のLSS術前患者でロコモ度3に陥っている患者の割合は高く、ロコモ度や体組成の評価から患者の状態を把握し、術前後で個々に応じたリハビリテーションプログラムの立案や栄養状態等を加味した多面的なアプローチがQOLを改善し、より質の高い理学療法の一助となると考える。 【倫理的配慮】本研究は当施設倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号: 22017) 。患者同意はオプトアウト方式で行った。 |
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Bibliography: | O2-1 |
ISSN: | 2434-3889 |
DOI: | 10.32298/kyushupt.2024.0_102_1 |