脊椎圧迫骨折患者の離床開始時期と治療成績の関連
【はじめに】当院では、脊椎圧迫骨折を受傷し保存的治療目的で入院した患者に対し、薬物療法や装具療法と併行してリハビリテーションを実施している。リハビリテーションでは、主治医の指示の下、クリニカルパスに準じ、全身状態や疼痛に応じた早期離床、早期ADL改善を図っている。しかし、全身状態や疼痛といった身体所見は患者によって多種多様であり、離床開始時期は異なる。そこで今回、離床開始時期と治療成績の関連について調査し、どの時期より歩行を開始し、ADL拡大を図っていけばよいかを検討する為に、本研究を実施した。【対象】2014年2月から2014年7月に脊椎圧迫骨折を呈し、当院へ保存的治療目的で入院した106名...
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Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2016; p. 261 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2016
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-2032 2423-8899 |
DOI | 10.11496/kyushuptot.2016.0_261 |
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Summary: | 【はじめに】当院では、脊椎圧迫骨折を受傷し保存的治療目的で入院した患者に対し、薬物療法や装具療法と併行してリハビリテーションを実施している。リハビリテーションでは、主治医の指示の下、クリニカルパスに準じ、全身状態や疼痛に応じた早期離床、早期ADL改善を図っている。しかし、全身状態や疼痛といった身体所見は患者によって多種多様であり、離床開始時期は異なる。そこで今回、離床開始時期と治療成績の関連について調査し、どの時期より歩行を開始し、ADL拡大を図っていけばよいかを検討する為に、本研究を実施した。【対象】2014年2月から2014年7月に脊椎圧迫骨折を呈し、当院へ保存的治療目的で入院した106名中、対象基準を満たした93名(男性17名、女性76名、年齢78.5±10.7歳)を対象とした。除外対象は、内科疾患を有し転院した者、後方視的に電子カルテにて経過を追えなかった者とした。【方法】入院から離床開始までの日数と治療成績(退院時Barthl index(以下、B.I)、退院時Numerical Rating Scale(以下、NRS)、在院日数)の関連について検討を行った。入院から離床開始までの日数については、入院した日からセラピストが介入し歩行を開始した日までの日数で統一し、電子カルテにて調査した。治療成績については、退院時に各項目の評価を行った。統計学的処理は、入院から離床開始までの日数と各治療成績においてSpearmanの順位相関係数を求め、有意水準は5%未満とした。統計にはDr. SPSS II for Windowsを用いた。【結果】入院から離床開始までの日数の平均は、2.55±2.27日であった。治療成績では、退院時B.Iが87.1±15.5点、退院時NRSは3.17±1.82、在院日数は20.5±5.09日であった。相関分析の結果、入院から離床開始までの日数と優位な相関が認められた治療成績は、退院時B.I(p=0.013、相関係数r=-0.256)と在院日数(p=0.00、相関係数r=0.360)で有意差を認め、やや相関があった。退院時NRS(p=0.068、相関係数r=0.190)については差を認めなかった。【考察】検定結果より、入院から離床までの日数と関連がある治療成績は、退院時B.Iと在院日数で有意な相関を認めた。退院時B.Iでは、負の相関を認め、入院から離床までの日数が少ない程、退院時B.Iの得点は高いことが示唆された。また、在院日数においては、正の相関を認め、離床までの日数が短い程、在院日数も短縮することが示唆された。一方、退院時NRSについては、有意な相関を認めなかった。入院から離床までの平均日数は2.55±2.27日であり、クリニカルパスに準じて離床を促すことで、退院時のADL能力の改善と在院日数の短縮に繋がる可能性があることが推察された。疼痛が残存する患者も存在したが、入院から離床までの日数との関連は認められず、その他の要因が関与していることが考えられた。今回の対象となった脊椎圧迫骨折患者の平均年齢では、78.5±10.7歳と後期高齢者が多くを占める。一般的に高齢者の長期安静臥床には、心肺機能の低下や廃用性筋力低下、誤嚥性肺炎などの二次的合併症のリスクが伴うと言われている。これらの二次的合併症を併発することで、ADL能力の改善に影響を及ぼし在院日数の延長化にも繋がることが容易に考えられる。二次的合併症の予防という点においても、クリニカルパスに準じて早期離床を図っていくことは重要であると考える。今後の課題としては、早期離床と圧潰率との関連や長期的な痛みの残存についての検討を行っていく必要があると考える。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき、当院の倫理委員会の承認を得て、患者に十分な説明を行い同意が得られた後に実施した。 |
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ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2016.0_261 |