肥満度・術後CRP反応期間による理学療法の検討

【目的】肥満は変形性膝関節症(以下膝OA)の1要因である。当院において人工膝関節全置換術(以下TKA)患者に肥満者を多くみる。今回,術前の栄養評価と肥満度によるTKA患者の術後CRP陰性化に要した期間を基に,術前後それぞれの時期に適切な理学療法を考慮し理学療法の円滑化を検討する。【方法】H23年11月~H27年12月の期間,当院にてTKA施行し,術前歩行可能なものを対象(計57名)。BMI18.5≦25.0未満をA群(11名),BMI25.0≦30.0未満をB群(12名),BMI30.0以上をC群(10名),電子カルテより年齢,BMI,術前血液データAlb,Hb,CRP,GPT,血糖値,術後C...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2016; p. 106
Main Author 山田, 直矢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2016.0_106

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Summary:【目的】肥満は変形性膝関節症(以下膝OA)の1要因である。当院において人工膝関節全置換術(以下TKA)患者に肥満者を多くみる。今回,術前の栄養評価と肥満度によるTKA患者の術後CRP陰性化に要した期間を基に,術前後それぞれの時期に適切な理学療法を考慮し理学療法の円滑化を検討する。【方法】H23年11月~H27年12月の期間,当院にてTKA施行し,術前歩行可能なものを対象(計57名)。BMI18.5≦25.0未満をA群(11名),BMI25.0≦30.0未満をB群(12名),BMI30.0以上をC群(10名),電子カルテより年齢,BMI,術前血液データAlb,Hb,CRP,GPT,血糖値,術後CRP陰性化(0.3mg/dl以下) に要した期間を抽出し,それぞれ3群間で多重比較を行った(Scheffe法)。それぞれのBMIと術後CRP陰性化に要した期間の相関をSpearmanの順位相関係数にて調べ,有意水準は5%とした。BMI18.5未満,内科疾患のあるものや,再置換,感染者等(計24名)は除外。【結果】各項目の平均値は,A群1.年齢:72.9歳,2.BMI:23.4,3. Alb:4.2g/dL,4. Hb13.8g/dl,5.術前CRP:0.1mg/dL,6. GPT:20.1U/L.7,血糖値:101.1,8.術後CRP陰性化に要した期間:16.5日B群1.年齢:75,6歳,2.BMI:27.9,3.Alb:4.3g/dL,4.Hb12.4g/dl,5.術前CRP:0.1mg/dL,6.GPT:18.3U/L,7.血糖値:107.7,8.術後CRP陰性化に要した期間:21.6日C群1.年齢:74.8歳,2.BMI:34.7,3.Alb:4.2g/dL,4.Hb12.3g/dl,5.術前CRP:0.2mg/dl,6.GPT:15.1U/L,7.血糖値:114.5,8.術後CRP陰性化に要した期間:30.5日。年齢,術前Alb値,GPT値,CRP値,血糖値に群間有意差。BMIではA群に比べB群(p<0.05),C群(p<0.01),B群に比べC群(p<0.05)と群間有意差を認めた。Hb値,術後CRP陰性化に要した期間はA群,C群間のみ有意差有り (p<0.02)。3群共にBMIと術後CRP陰性化に要した期間との相関。【考察】A群とC群のHb値,術後CRP陰性化に要した期間に有意差を認めた。真鍋によると,肥満では炎症促進性の免疫細胞が増加し,相対的に炎症を制御する細胞群は減る,との報告があり,BMIがより高値のC群において有意差を認める結果になったと考えた。また,新井によると肥満は貧血傾向を促進するものとされ,肥満の影響によるHbの有意差が考えられた。血糖値に関して,有意差はないが,A群<B群<C群と増加傾向となっており,C群においてBMIと術後CRP陰性化に要した期間に負の相関傾向(r=-0.4)を示した。これらの事からBMIがより高値になる程インスリン抵抗性や低Hbによる組織への酸素供給量が少なく治癒に時間を要し,その他の内因性の影響も重なる事でCRP陰性化が遅延する可能性が考えられ,結果として治癒反応へのエネルギー量が多く必要であると考えた。以上から,術前ではBMIがより高値な例程,積極的なレジスタンストレーニングによる全身の筋量増加,術後感染,創傷治癒遅延予防のための減量やインスリン抵抗性改善を目的に理学療法を行い,術後の早期CRP陰性化へと繋げていくことが望ましいと思われる。また八幡らによると,急性期での身体能力・ADL改善は,体力強化・筋力強化のようなパワーの回復を介した機序ではなく,主として動作学習の機序を介した効果発現によるものが大きく、術後は消費エネルギー量を抑え,骨格筋量の維持や基本動作獲得による廃用症候群の予防,ROM-ex等による機能改善等を中心に図っていく事が望ましいと考えられる。侵襲時にはCRP3mg/dl以下を同化期と考える目安があるとされ,同化期へと進行していくに伴い適切な栄養管理下での運動療法を行っていく必要があると考えた。【倫理的配慮,説明と同意】当院倫理委員会による個人情報保護の順守を確認し,了承を得た。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2016.0_106