変形性膝関節症患者における歩き始め動作時の股関節と足関節の協調性パターンについて

【目的】変形性膝関節症 (膝OA)患者の歩行時の下肢関節間の動きの協調性パターンは変化しており、協調性の変化は疼痛や関節負荷と関連があると報告されている。膝OA患者は歩き始め動作時に疼痛を訴えることが多く、その要因の一つとして股関節および足関節における協調性パターンの変化に伴う運動制御能力の低下が考えられる。そこで、本研究ではModified vector coding technique (MVCT)を用いて膝OA患者の歩き始め動作時の股関節および足関節における協調性パターンを明らかにし、協調性パターンの違いが膝関節に及ぼす影響について重症度別の相違を明らかにすることを目的とした。 【方法】...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2024; p. 310
Main Authors 本山, 達男, 阿南, 雅也, 川嶌, 眞人, 井原, 拓哉, 羽田, 清貴, 岸本, 進太郎, 辛嶋, 良介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2024
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2024.0_310_3

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Summary:【目的】変形性膝関節症 (膝OA)患者の歩行時の下肢関節間の動きの協調性パターンは変化しており、協調性の変化は疼痛や関節負荷と関連があると報告されている。膝OA患者は歩き始め動作時に疼痛を訴えることが多く、その要因の一つとして股関節および足関節における協調性パターンの変化に伴う運動制御能力の低下が考えられる。そこで、本研究ではModified vector coding technique (MVCT)を用いて膝OA患者の歩き始め動作時の股関節および足関節における協調性パターンを明らかにし、協調性パターンの違いが膝関節に及ぼす影響について重症度別の相違を明らかにすることを目的とした。 【方法】対象は膝OA患者14人と健常者14人 (対照群)で全例女性であった。膝OA患者は軽度膝OA群 (KL分類Ⅰ・Ⅱ:7人)と、重度膝OA群 (KL分類Ⅲ・Ⅳ:7人)に分類した。課題動作は任意の速度での歩行とし、対象側下肢より歩き始めてから1歩目の立脚期を解析区間とした。計測には3次元動作解析システムを用い、骨盤-大腿および下腿-足部間における直交する3軸方向の角速度をそれぞれ算出した。協調性の定量化にはMVCTを用いて、股関節における協調性パターンを骨盤の動きが優位なProximal-phase、大腿の動きが優位なDistal-phase、骨盤と大腿の動きが同方向のIn-phase、骨盤と大腿の動きが逆方向のAnti-phaseの4つに分類した。同様に、足関節における協調性パターンを下腿の動きが優位なProximal-phase、足部の動きが優位なDistal-phase、下腿と足部の動きが同方向のIn-phase、下腿と足部の動きが逆方向のAnti-phaseの4つに分類した。1歩目の立脚期を荷重応答期 (LR)、立脚中期 (MSt)、立脚終期 (TSt)、前遊脚期 (PSw)に相分けし、各相における協調性パターンの出現率を算出した。統計解析は、正規性の有無に従い、一元配置分散分析あるいはKruskal-Wallis検定と多重比較法を用いて協調性パターンの出現率について3群間で比較した。統計解析にはR4.3.3を用い、有意水準は5%とした。 【結果】骨盤-大腿間の協調性パターンの出現率はLRにおいて重度膝OA群は対照群よりも有意にIn-phase (同側骨盤挙上-大腿外転)が高値を示した (p < .05)。下腿-足部間の協調性パターンの出現率はLRにおいて重度膝OA群は対照群よりも有意にProximal-phase (外側傾斜)が高値であった (p < .05)。また、TStにおいて重度膝OA群は対照群よりも有意にProximal-phase (下腿外旋)が高値であり、Anti-phase (下腿内旋-足部外旋)が低値であった (それぞれ、p < .01, p < .05)。 【考察】重度膝OA群はLRにおける骨盤-大腿間の協調性パターンではIn-phaseが高値を示したことから、股関節のstiffnessの可能性が示唆された。また、下腿-足部間の協調性パターンの出現率は下腿外側傾斜が高値であったことから、相対的に膝関節内反になる可能性が示唆された。さらに、TStにおける下腿足部間の協調性パターンの出現率では重度膝OA群は下腿内旋足部外旋が低値であり下腿外旋が高値であったことから、下腿外旋が優位であり相対的に膝関節外旋位になる可能性が示唆された。 【結語】本研究の結果から歩き始め動作時のLR、TStにおける重度膝OA群の股関節および足関節の協調性パターンの相違が明らかになった。 【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり、すべての被検者には研究の意義、目的などについて説明し同意を得て行った。
Bibliography:P10-3
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2024.0_310_3