内側半月板損傷患者におけるBone marrow lesionsの有無による膝関節外方加速度の相違

【はじめに】 Bone marrows lesions (BMLs)は,膝関節のMRI画像で観察される骨髄内陰影所見の総称であり,内側半月板損傷,特に後角損傷など荷重分散機能の破綻が関与している.一方で,歩行時の膝関節外側スラスト (外側スラスト)の増大は膝関節内側コンパートメントへの力学的負荷を増加させると言われている.外側スラストについて慣性センサを用いて検討した報告は散見されるが,半月板損傷患者を対象としたBMLsの有無による側方加速度の相違は明らかではなく,理学療法を実施する上で重要な知見となり得る.そこで,本研究の目的は,半月板損傷患者のBMLsの有無による歩行時立脚中期までの膝関節...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2024; p. 303
Main Authors 辛嶋, 良介, 羽田, 清貴, 岸本, 進太郎, 加藤, 浩, 本山, 達男, 井原, 拓哉, 川嶌, 眞人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2024
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2024.0_303_3

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Summary:【はじめに】 Bone marrows lesions (BMLs)は,膝関節のMRI画像で観察される骨髄内陰影所見の総称であり,内側半月板損傷,特に後角損傷など荷重分散機能の破綻が関与している.一方で,歩行時の膝関節外側スラスト (外側スラスト)の増大は膝関節内側コンパートメントへの力学的負荷を増加させると言われている.外側スラストについて慣性センサを用いて検討した報告は散見されるが,半月板損傷患者を対象としたBMLsの有無による側方加速度の相違は明らかではなく,理学療法を実施する上で重要な知見となり得る.そこで,本研究の目的は,半月板損傷患者のBMLsの有無による歩行時立脚中期までの膝関節側方加速度のうち,最大外方加速度値の相違について調査することとした. 【対象と方法】 対象は,当院で内側半月板損傷の診断を受けた18名とし,平均年齢は61.9±7.9歳,平均BMIは 24.3±2.6kg/m2であった.関節鏡とMRI所見による半月板損傷部位の内訳は中節 (1名),中後節 (8名),後節 (4名),後角 (5名),立位単純X線前後像でのKellgren-Lawrence分類はⅠ (2名),Ⅱ (8名),Ⅲ (8名)であった.BMLsの評価はMRI (FUJIFILM社)を用いて冠状断T2強調像 (スライス厚4.5mm,スライス間隔0.5mm)で行った,大腿骨,脛骨いずれかの関節面に異常陰影が確認されたものをBMLsあり群 (あり群),それ以外を群とした. 歩行時の膝関節側方加速度は,慣性センサ(Microstone社)を用いて計測した.10mの歩行路を対象者の任意の速度で歩行させ,大腿遠位外側と腓骨頭に慣性センサを貼付し3軸方向の加速度を計測した.サンプリング周波数は200Hzとした.腓骨頭に貼付したセンサの下腿長軸方向の加速度により1歩行周期を同定し,3歩目からの連続した3歩行周期を解析区間とした.大腿遠位外側部に貼付したセンサの外方を正値とする側方加速度(外方加速度)より.立脚期開始から歩行周期50%までの外方加速度の有無を確認し,最大外方加速度を抽出した後3歩行周期で平均した. 統計解析はR4.2.1 (CRAN)を使用し,あり群と群の最大外方加速度の比較にはMann WhitneyのU検定を用い,効果量 (r)も算出した.有意水準は5%とした. 【結果】 BMLsは18名中8名 (44.4%)に認めた.外方加速度はあり群で8名中4名 (50%),群で10名中3名 (30%)に認めた.最大外方加速度はあり群で平均0.35±0.47m/s2,群で平均0.10±0.16m/s2であり,有意差は認めず効果量 (r)は0.20であった. 【考察】 BMLsと歩行時の外側スラストは,関節変形の進行に伴い出現する頻度は高くなり,外側スラストの側方加速度では立脚期開始10%から50%までに急峻な変化を伴う外方加速度波形を示すとされている. 本研究では両群の最大外方加速度に有意差は認めなかったが,あり群の内50%に大腿骨の外方加速度を認めた.内側半月板損傷,特に後角断裂など荷重分散機能の破綻が示唆される患者において,この外方加速度は看過できない力学的負荷の要因になりうる可能性がある.よって理学療法では,大腿骨の外方動揺を誘発する荷重時の脛骨外方傾斜の増加の有無や,股関節周囲筋,特に殿筋群の遠心性収縮能といった評価の必要性が考えられた. 【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言による倫理的配慮に基づいた研究であり,当院倫理審査による承認 (承認番号20171102-01)を受け,全ての対象者には十分な説明による同意を得て実施した。
Bibliography:P3-3
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2024.0_303_3