秋田県笹森丘陵の後期中新統船川層の火山灰層ジルコンU-Pb年代

後期中新世地球寒冷化 (Late Miocene global cooling; LMGC) は、海洋循環やモンスーン強度の変化を通して、当時の日本海の海洋環境や生態系にも影響を及ぼしたと考えられている。Matsuzaki et al. (2022) では、LMGC開始後の日本海の放散虫化石群集変化から、日本海中深層に流入していた貧酸素の太平洋中央水が減少した可能性を示唆した。ただし、この原因としては寒冷化に伴う太平洋子午面循環の弱化のみならず、中深層が流入した古津軽海峡の隆起の可能性も指摘されている。それぞれの寄与を分離してより正確な古海洋環境変化の描像を理解するには、気候変化や地殻変動のタ...

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Published inAnnual Meeting of the Geological Society of Japan Vol. 2024; p. 343
Main Authors 池田, 昌之, 遠嶋, 美月, 佐久間, 杏樹, 仁木, 創太, 平田, 岳史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本地質学会 2024
The Geological Society of Japan
Subjects
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ISSN1348-3935
2187-6665
DOI10.14863/geosocabst.2024.0_343

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Summary:後期中新世地球寒冷化 (Late Miocene global cooling; LMGC) は、海洋循環やモンスーン強度の変化を通して、当時の日本海の海洋環境や生態系にも影響を及ぼしたと考えられている。Matsuzaki et al. (2022) では、LMGC開始後の日本海の放散虫化石群集変化から、日本海中深層に流入していた貧酸素の太平洋中央水が減少した可能性を示唆した。ただし、この原因としては寒冷化に伴う太平洋子午面循環の弱化のみならず、中深層が流入した古津軽海峡の隆起の可能性も指摘されている。それぞれの寄与を分離してより正確な古海洋環境変化の描像を理解するには、気候変化や地殻変動のタイミングを精度良く決定することが欠かせない。 東北地方に広く分布する新第三系の堆積岩は、当時の東北日本のテクトニクスだけでなく海水準、太平洋の海洋循環の変動を反映し、日本海古環境の変遷を理解する上で重要である。秋田県出羽山地笹森丘陵の上部新第三系の海成堆積岩は珪藻層序が構築され、珪藻化石群集から古水深変化も推定されたが、LMGCの古海洋環境変化との前後関係は不明であった (加藤・柳沢, 2021)。 本研究では、加藤・柳沢 (2021) のセクションE、Jで詳細な地質調査を行い、LMGCの上部中新統船川層の火山灰層を採取してジルコンを抽出し、LA-ICP-MSを用いてU-Pb年代測定を行った。LA-ICP-MS測定は東京大学地殻化学実験施設において行った。その結果、セクションJの火山灰層J41で7.490±0.063 Ma、その約2.5 m上位のJ42で7.414±0.064 Maの年代値が得られ、珪藻層序と整合的であった。さらに、加藤・柳沢 (2021) の珪藻層序および岩相層序の類似性によりJ41と対比されると考えられるセクションEの火山灰層E2-07は、7.43±0.11 Maとなり誤差の範囲で重なった。また、セクションJで今回測定したJ41、J42の年代と、その火山灰を挟む上下の珪藻生層準D70、D73の年代値から、J41・J42の上下で船川層の堆積速度が大きく減少したことが示された。これは、加藤・柳沢 (2021) で珪藻群集組成により復元された古水深が、陸棚外側から斜面への深化を示したこととも整合する。この結果から、LMGC開始時の同地域は隆起傾向になく、太平洋中央水減少に対する海峡隆起の影響は限定的であった可能性が示唆された。[引用文献]Matsuzaki et al. (2022), Scientific Reports, 12, 11396.加藤・柳沢 (2021), 地質学雑誌, 127(2), 105-120.
Bibliography:T15-P-26
ISSN:1348-3935
2187-6665
DOI:10.14863/geosocabst.2024.0_343