高校全運動部活動のサポート体制と活動について

【目的】 運動器の健康・日本協会による認定スクールトレーナー制度が本格化し,理学療法士が学校保健下で正式に携わる機会が得られるようになった.今後,理学療法士による学校現場での児童・生徒の運動器疾患予防に関する活動が,さらに活発化していくことが予想される. 学校現場での運動器疾患の発生には,部活動によるものも多いため,演者は特定の部単体としてではなく学校単位で活動できる機会を模索してきた.その結果,2019年より公的に任用され活動を開始した.今後,理学療法士が行う学校現場での活動の一助となることを目的に,演者の行った活動とそれに対する課題ついて報告する. 【活動内容】 福岡県教育委員会より会計年...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2024; p. 304
Main Author 森口, 晃一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2024
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2024.0_304_1

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Summary:【目的】 運動器の健康・日本協会による認定スクールトレーナー制度が本格化し,理学療法士が学校保健下で正式に携わる機会が得られるようになった.今後,理学療法士による学校現場での児童・生徒の運動器疾患予防に関する活動が,さらに活発化していくことが予想される. 学校現場での運動器疾患の発生には,部活動によるものも多いため,演者は特定の部単体としてではなく学校単位で活動できる機会を模索してきた.その結果,2019年より公的に任用され活動を開始した.今後,理学療法士が行う学校現場での活動の一助となることを目的に,演者の行った活動とそれに対する課題ついて報告する. 【活動内容】 福岡県教育委員会より会計年度任用職員の辞令を受け,福岡県立A高等学校 (以下,A高校)に部活動指導員として活動した.活動の主な目的は,競技中の外傷・障害予防とした.任用期間は2019年9月1日から2023年3月31日であった. A高校には運動部として11の競技が部活動として存在していた.本活動は,訪問頻度は少なくとも月2回とし,連絡係の教員を通じて,訪問時に各部からの要請の有無を確認し,要請があった場合はその部に出向き対応する,要請のない場合は,任意で巡回を行う形とした. 主に要請された内容は,受診前の有痛者からの相談 (以下,有痛相談),医療機関や整骨院への通院中または通院終了後の状態に関する相談 (以下,通院相談),部全体へのコンディショニング指導およびトレーニング指導であった.有痛相談については,医療機関への受診を勧める,もしくは競技を一旦中止あるいは運動強度を低下させてコンディショニングを整えるといった主に2つの判断を行うことが必要であった.受診を勧めた中には,具体的な医療機関の情報提供を行う場合や,演者が近隣の医療機関に所属する専門医に直接連絡を入れる場合もあり,円滑に受診できるように取り計らった. 【結果】 有痛相談は,男子バレーボール部2件,女子バレーボール部6件,サッカー部5件,女子バスケットボール部5件,女子陸上部4件,野球部6件の計28件であった.通院相談は,男子バレー部1件,女子バレーボール部3件,サッカー部3件,女子陸上部1件, 野球部2件,男子柔道部1件の計11件であった.このうち,医療機関への受診を勧めたのは,計15件であった. コンディショニング指導は,男子バレーボール部1回,野球部2回,トレーニング指導は,女子バレーボール部2回,男子バスケットボール部1回,野球部4回であった. 【考察】 トレーナーが存在する部においては,コンディショニングに関する情報提供や症状を有する場合に医療機関への受診が必要かの判断は比較的容易に行われていると思われるが,トレーナーが存在しない部においては,それらが不十分であり,症状の改善に時間を要する,競技に参加できない場合の対応が不十分といった課題を有することが想像される.実際に今回の活動を通じて,「どこの病院に行ったらいいかわからなかった」,「受診すべきか迷っていた」,「競技に参加せずただ見学中心になっていた」といった声があり,巡回することでこうした声を拾うことができ,本活動以前よりは円滑な症状の改善や運動機能低下予防に対し一役を担えたと思われた.一方で,要請のあった部には偏りがあり,本活動に対する選手・指導者の理解および認知に差を感じ,啓発の課題が残った.また,演者が直接医師に連絡を取るような対応も行ったが,本来,近隣の医療機関と連携できるシステムの構築が理想である. 【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき,個人情報の特定や漏洩がないように取り扱いには十分に配慮した.
Bibliography:P4-1
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2024.0_304_1