開設者からみた助産所開設・運営の事例研究

背景:日本における全出産数の1%を,地域で活動する助産師が助産所や産婦の自宅において介助している。また産科医不足という周産期医療の課題の解決策として,「正常分娩」を自立して行う助産師の業務が見直されている。 目的:助産所の開設形態別に,開設者の視点からみた助産所を開設・運営する体験を明らかにする。 方法:2003年から2006年の間に,助産所を開設または業務変更を行った助産所管理者5名を対象に,聞き取り調査を実施した。 結果:助産師は助産所を開設することによって,自らが目指すケアを実現させることができ,同時に不本意なケアを提供している葛藤から解放されていた。また,助産師は家庭生活に合わせて段階...

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Published in医療と社会 Vol. 21; no. 3; pp. 295 - 307
Main Authors 谷口, 千絵, 村田, 加奈子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 医療科学研究所 2011
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ISSN0916-9202
1883-4477
DOI10.4091/iken.21.295

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Summary:背景:日本における全出産数の1%を,地域で活動する助産師が助産所や産婦の自宅において介助している。また産科医不足という周産期医療の課題の解決策として,「正常分娩」を自立して行う助産師の業務が見直されている。 目的:助産所の開設形態別に,開設者の視点からみた助産所を開設・運営する体験を明らかにする。 方法:2003年から2006年の間に,助産所を開設または業務変更を行った助産所管理者5名を対象に,聞き取り調査を実施した。 結果:助産師は助産所を開設することによって,自らが目指すケアを実現させることができ,同時に不本意なケアを提供している葛藤から解放されていた。また,助産師は家庭生活に合わせて段階的に業務拡大を行い,居住する地域社会の一員として受け入れられていった過程がみられた。分娩の取扱いを始めることは覚悟が要ることであり,助産師生命を賭けた業務拡大となっていた。有床助産所は開設資金と維持に課題があることが明らかとなった。 結論:助産師は自立自営で助産所を開設することにより,病院勤務では実現しなかった妊娠・出産・産後を通じた継続的なケアを提供することができていた。助産師は,地域の一住民として社会的信用を得て,家庭生活に合わせた業務拡大を行っていた。
ISSN:0916-9202
1883-4477
DOI:10.4091/iken.21.295