脳血管障害患者における障害によるストレスの認知的評価に関する研究 : 退院時,退院後2週間,退院後3か月における経時変化
目的:本研究では,脳血管障害患者を対象に,障害によるストレスの認知的評価とコーピング行動の特徴を退院時,退院後2週間,退院後3か月の3時点で経時的な変化を明らかにすることを目的とする.方法:対象は,首都圏の3医療機関にリハビリテーション目的で入院し,1998年10月〜1999年2月に退院した脳血管障害患者305人(100%)のうち,発症後初めて自宅退院した者(主治医が質問内容の理解が困難と判断したものを除く)105人(34.4%)である.調査は,退院時(T1),退院後2週間(T2),退院後3か月(T3)の3時点とし,研究者が質問紙による面接調査を行った.T1は病室,T2,T3は自宅訪問し調査を...
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Published in | 日本地域看護学会誌 Vol. 3; no. 1; pp. 59 - 67 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本地域看護学会
2001
Japan Academy of Community Health Nursing |
Subjects | |
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ISSN | 1346-9657 2432-0803 |
DOI | 10.20746/jachn.3.1_59 |
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Summary: | 目的:本研究では,脳血管障害患者を対象に,障害によるストレスの認知的評価とコーピング行動の特徴を退院時,退院後2週間,退院後3か月の3時点で経時的な変化を明らかにすることを目的とする.方法:対象は,首都圏の3医療機関にリハビリテーション目的で入院し,1998年10月〜1999年2月に退院した脳血管障害患者305人(100%)のうち,発症後初めて自宅退院した者(主治医が質問内容の理解が困難と判断したものを除く)105人(34.4%)である.調査は,退院時(T1),退院後2週間(T2),退院後3か月(T3)の3時点とし,研究者が質問紙による面接調査を行った.T1は病室,T2,T3は自宅訪問し調査を行った.調査全過程の期間は1998年10月〜1999年6月であり,3回目まで継続的に面接を受けた患者は85人(27.9%)であった.調査内容は,基本属性,ADL,認知能力,ストレス,コーピング行動;(1)主観的評価(直面志向型,情動志向型,回避志向型コーピング),(2)客観的評価(活動度変数),QOLから構成される.分析方法は,3回目まで継続的に面接を受けた85人を対象に,ストレスの認知的評価とコーピング行動の経時変化の特徴について,反復測定による分散分析(Repeated Measure ANOVA),多重比較(Tukey法)により検討を行った.結果:退院直後にストレスは有意に増大しており,特に「状況の変化」や「自己管理信念」に関するストレスが有意に増大していた.また,コーピング行動は「情動志向型」が増え,「直面志向型」が減る傾向にあった.退院後3か月では,ストレスは有意に減少し,「情動志向型」コーピングが減り,「直面志向型」コーピングが増大する傾向にあった.活動度変数も,退院後3か月で高くなる傾向にあった.結論:本研究で明らかにされた脳血管障害患者のストレスの認知的評価とコーピング行動の経時変化の特徴から,退院直後は,訓練行動を促すより,むしろ精神面への援助により心理的安定を図る必要があり,患者自らが積極行動を起こすような働きかけが重要であることが提言された.障害によるストレスの認知的評価の経時変化の特徴は,脳血管障害患者の障害に伴う心理的側面への理解に役立つ示唆を与えたといえる. |
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ISSN: | 1346-9657 2432-0803 |
DOI: | 10.20746/jachn.3.1_59 |