在宅高齢者の睡眠支援に向けての研究 高齢者の主観的睡眠感とコーピング手法との関連をもとに

2008年版国民衛生の動向に15歳以上の男女を10歳ずつ区切って不眠の有訴率を比較した統計において75~84歳まで年齢が高くなるほど不眠の有訴率が高くなり,65歳以上の男女の半数以上が不眠を訴えていると記されており,高齢者に対する睡眠支援が高齢化社会のわが国おいて重要な課題であることが示唆された.不眠の高齢者は「今夜も,また眠れないのでは」と不安や恐怖を覚え,睡眠に対して強いストレスを感じるようになる.睡眠とストレスコーピングについて検討した報告は少なく,高齢者において睡眠とコーピングとの関係を検討した報告は見られない.本研究では高齢者の主観的睡眠感とコーピングとの関係について地域に在住する高...

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Published in昭和学士会雑誌 Vol. 74; no. 3; pp. 340 - 353
Main Authors 石津, みゑ子, 米澤, 弘恵, 大宮, 信哉, 佐藤, 啓造, 岩田, 浩子, 入戸野, 晋, 西田, 幸典, 金, 成彌, 藤城, 雅也, 根本, 紀子, 宇治, 明日香
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 01.06.2014
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ISSN2187-719X
2188-529X
DOI10.14930/jshowaunivsoc.74.340

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Summary:2008年版国民衛生の動向に15歳以上の男女を10歳ずつ区切って不眠の有訴率を比較した統計において75~84歳まで年齢が高くなるほど不眠の有訴率が高くなり,65歳以上の男女の半数以上が不眠を訴えていると記されており,高齢者に対する睡眠支援が高齢化社会のわが国おいて重要な課題であることが示唆された.不眠の高齢者は「今夜も,また眠れないのでは」と不安や恐怖を覚え,睡眠に対して強いストレスを感じるようになる.睡眠とストレスコーピングについて検討した報告は少なく,高齢者において睡眠とコーピングとの関係を検討した報告は見られない.本研究では高齢者の主観的睡眠感とコーピングとの関係について地域に在住する高齢者729名を対象としてアンケート調査を実施し,648名から主観的睡眠感に対し,全問回答したアンケートを回収して(有効回収率88.9%)その内容を解析することにより在宅高齢者の主観的睡眠感とコーピングとの関係を検討し,さらに,どのようにすれば在宅高齢者の睡眠を支援できるかを検討した.主観的睡眠感の分析には睡眠に対する自己評価と睡眠習慣および生活習慣との関連が調査できるように作成された東京都神経科学総合研究所の生活習慣調査質問紙を一部改変した20項目,4段階の質問票を作成した(Cronbachのα係数≧0.8).主観的睡眠感得点が高いほど良好な睡眠が得られていると自覚している.コーピングについては過去1か月間に不眠を経験した332名(648名中の51.2%)を分析対象とし,ストレスの基となる人や環境そのものに働きかけ,それ自体を変化させて解決を図ろうとする問題焦点コーピング8項目,ストレッサーに働きかけるのではなく,それに対する感じ方や考え方を変えようとする情動焦点コーピング14項目の計22項目,3段階の質問票を作成した(Cronbachのα係数≧0.8).主観的睡眠感得点の中央値61点以上を主観的睡眠感高群,61点未満を低群として年齢,性別,健康度,食事の規則性,職業の有無,社会的活動状況,社会的支援の程度,問題焦点コーピング,情動焦点コーピングについて2群間比較を行ったところ,問題焦点コーピングには2群間に有意差が認められなかったが,情動焦点コーピングは主観的睡眠感低群で高群より有意に多く行われていた.高齢者の主観的睡眠感を良好にするためには高齢者自身が規則正しい生活をして社会的接触を増やすこと,高齢者自身が家族や友人から文句や小言をいわれるような言動を減らすとともに家族や友人を思いやり,悩み事の相談に率先してのるなど,家族や友人とのポジティブな交流をすること,高齢者自身がストレスの原因となる環境を改めるなど問題焦点コーピングを行うことが肝要であることが明らかとなった.これに対応し,家族や友人,保健師などの支援者は高齢者が社会的接触をなるべく多く保てるようサポートし,高齢者の失敗にいちいち小言をいわず,なるべく寛容であるとともに高齢者が困ったときや病気になったときのサポート体制を確立しておく必要があると考えられる.
ISSN:2187-719X
2188-529X
DOI:10.14930/jshowaunivsoc.74.340