個々の患者に応じた服薬指導のための服薬自己調節判別スケールの検討

「緒言」薬剤師による服薬指導は適正な薬物治療の一翼を担うものとして他の医療関係者ならびに社会から期待されている. 薬剤情報提供業務, 薬剤管理指導業務の進展に伴い, 各薬剤の作用副作用情報は文書情報として患者に提供されるに至った. 患者への薬剤情報提供は薬害防止に寄与し, 患者の知識欲を満足させると思われる反面, 自己判断による服薬調節(以下, 服薬自己調節と略す)を誘発し, その結果期待した治療効果が得られなくなるという側面を持ち合わせている. 治療効果の観点から服薬自己調節は問題行為であり, どのような患者でどうして服薬自己調節が生じるのか, その要因を把握しておくことは, 薬剤師がファー...

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Published in病院薬学 Vol. 25; no. 2; pp. 138 - 148
Main Authors 飯原, なおみ, 森田, 修之, 塚本, 豊久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本医療薬学会 1999
日本病院薬学会
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ISSN0389-9098
2185-9477
DOI10.5649/jjphcs1975.25.138

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Summary:「緒言」薬剤師による服薬指導は適正な薬物治療の一翼を担うものとして他の医療関係者ならびに社会から期待されている. 薬剤情報提供業務, 薬剤管理指導業務の進展に伴い, 各薬剤の作用副作用情報は文書情報として患者に提供されるに至った. 患者への薬剤情報提供は薬害防止に寄与し, 患者の知識欲を満足させると思われる反面, 自己判断による服薬調節(以下, 服薬自己調節と略す)を誘発し, その結果期待した治療効果が得られなくなるという側面を持ち合わせている. 治療効果の観点から服薬自己調節は問題行為であり, どのような患者でどうして服薬自己調節が生じるのか, その要因を把握しておくことは, 薬剤師がファーマシューティカルケアを実践する上で必要である. 服薬自己調節という故意の行為には患者の意思が働いており, 服薬自己調節の要因とノンコンプライアンス(服薬自己調節とのみ忘れを含む)の要因とでは必然的に異なっていると思われる. ノンコンプライアンスの要因については, 人口統計学的因子(民族, 年齢, 収入など), 薬物治療の形態(剤形, 服用回数, 服用期間など), 患者の理解度(服薬の重要性など), 患者の見方(薬物治療副作用に対する不安, 治療効果の自覚など), 医療者との信頼関係などの観点から種々検討1-10)されているが, 服薬自己調節に限定しての報告11-15)は少なく, またそれらの多くはインタビューを基にした観察的記述であり, 統計学的手法を用いた要因分析に関してはほとんど報告されていない. 一方, 服薬指導の望ましいあり方としては画一的なものではなく, 患者の教養理解力性格などに応じたものが好ましいとされている. しかしながら, 個々の患者に対応した具体的な指標ならびに指導方法に関する報告16-18)は少なく, 指導方法内容は担当薬剤師の力量に委ねられているのが現状である. 著者らは, 患者が服薬自己調節の傾向にあるか否かを予測し, その問題がどこにあるのかを見極めることのできる, 服薬自己調節判別スケールを考案した.
ISSN:0389-9098
2185-9477
DOI:10.5649/jjphcs1975.25.138