自閉症スペクトラム児への 音韻分解と音韻抽出課題を用いたしりとり指導 ひらがなの読みが未習得であった事例

本事例では、ひらがなの読みが未習得である自閉症スペクトラム児に対して、しりとりの習得に向けた指導を実施した。指導開始前、対象児は獲得している名詞の語彙が多いにもかかわらず、ルールに沿ったしりとりの実施は困難であった。また対象児へは文字刺激を用いた教示やプロンプトは困難であったため、指導には文字刺激を用いず絵カードを使用した。指導は音韻抽出課題、音韻分解課題、しりとり課題1、しりとり課題2の順で段階的に実施した。しりとり課題1では、口頭でのしりとりの習得を目指した。ただし、本課題では単語の語尾が特殊音節であった場合はしりとりを始めから行い、それ以外の場合は継続して行った。しりとり課題2 では、口...

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Published in自閉症スペクトラム研究 Vol. 19; no. 2; pp. 49 - 56
Main Authors 足立, みな美, 嘉手苅, 瑠輝, 井上, 雅彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会 28.02.2022
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ISSN1347-5932
2434-477X
DOI10.32220/japanacademyofas.19.2_49

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Summary:本事例では、ひらがなの読みが未習得である自閉症スペクトラム児に対して、しりとりの習得に向けた指導を実施した。指導開始前、対象児は獲得している名詞の語彙が多いにもかかわらず、ルールに沿ったしりとりの実施は困難であった。また対象児へは文字刺激を用いた教示やプロンプトは困難であったため、指導には文字刺激を用いず絵カードを使用した。指導は音韻抽出課題、音韻分解課題、しりとり課題1、しりとり課題2の順で段階的に実施した。しりとり課題1では、口頭でのしりとりの習得を目指した。ただし、本課題では単語の語尾が特殊音節であった場合はしりとりを始めから行い、それ以外の場合は継続して行った。しりとり課題2 では、口頭でのしりとりの中で単語の語尾音が撥音の場合、そのことを指導者に報告することを目指した。なお、両しりとり課題では絵カードを用いた回答を求める絵カード選択応答条件から、口頭での回答を求める口頭応答条件へと移行できるよう課題を設定した。その結果、17セッションで全課題の達成基準を満たし、口頭でのしりとりの中で単語の語尾音が撥音であることを報告することが可能となった。指導後、対象児は遊びで保護者としりとりをするなど、指導内容が日常生活場面でも般化したことが報告された。本事例から、ひらがなの読みが未習得である自閉症スペクトラム児に対して、しりとりの習得に向けた、音韻分解課題と音韻抽出課題を用いた段階的な課題設定は有効である可能性が示唆された。
ISSN:1347-5932
2434-477X
DOI:10.32220/japanacademyofas.19.2_49