青少年における顎関節症状の疫学研究 : 2. 疫学調査の結果とその検討

近年,顎関節部の症状を訴え,医療機関を受診する者が増加している。また,青少年期における症状所有者の増加も注目されている。そこで我々はどのような症状がどのような分布をしているかを明らかにするために本研究を行った。12歳から24歳までの中学生,高校生,大学生を対象として顎関節症状の疫学調査を行なった。方法は5項目の質問調査と事前に再現性を確認した7項目の症状検出で,対象数は1,873名であった。質問調査では全体の20.4%の者に自覚症状が認められた。肯定回答が多かった症状は「雑音」(16.1%),「口があけにくい」(6.7%),「顎運動痛」(6.1%)であった。有症状者の割合は中学生からすでに高く...

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Published inJOURNAL OF DENTAL HEALTH Vol. 46; no. 5; pp. 666 - 675
Main Authors 本多, 丘人, 竹原, 順次, 谷, 宏, 本間, 三順, 三宅, 亮
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 1996
Japanese Society for Oral Health
Subjects
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ISSN0023-2831
2189-7379
DOI10.5834/jdh.46.5_666

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Summary:近年,顎関節部の症状を訴え,医療機関を受診する者が増加している。また,青少年期における症状所有者の増加も注目されている。そこで我々はどのような症状がどのような分布をしているかを明らかにするために本研究を行った。12歳から24歳までの中学生,高校生,大学生を対象として顎関節症状の疫学調査を行なった。方法は5項目の質問調査と事前に再現性を確認した7項目の症状検出で,対象数は1,873名であった。質問調査では全体の20.4%の者に自覚症状が認められた。肯定回答が多かった症状は「雑音」(16.1%),「口があけにくい」(6.7%),「顎運動痛」(6.1%)であった。有症状者の割合は中学生からすでに高く,年齢による増加傾向はみられなかった。男女で比較をした場合,その割合は女子に多い傾向が認められた。また,大学生女子では男子と比べ複数症状を有する者が多く認められた。診査結果では全体(中学生以上)の10.7%に症状が認められた。多く認められた症状はクリック音(3.3%)および最大開口度2SD以下(最大開口度が学年性別の平均と2SDの差より小さい者)(2.4%)であった。症状検出の割合は中高生では年齢による増加は特にみられなかったが,大学生ではやや多く13.5%の者が検出された。顎関節症状の程度を表すために,質問調査と診査による調査を統合し,症状の重なり等により有症状者を区分することを試みた。その結果,有症状者は全体の24.5%に達していたが,比較的軽度と考えられるGnathic Index 1,2がほとんど(82.3%)で,数項目の症状を持つものや顎運動痛,開口制限が検出される者はわずかであった。以上の結果から,大部分は「雑音」等のみの軽度と考えられる症状ではあるが,わが国の青少年の約4人に1人は何らかの顎関節症状を有することが示唆された。
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.46.5_666