子どもの道徳性の発達に応じた道徳教育-「わたしたち」の範囲とその拡大にもとづく道徳教育の可能性

本稿の目的は、道徳の授業を行う際に前提となる子どもの道徳性の発達を、進化心理学の知見を踏まえながら、再構築することを目的としている。本稿が得た結論は以下の3点である。まず第1に、道徳性の発達が他律から自律へという不可逆的なものではなく、可逆的なものであり、そのため、道徳的になり続けていくために教育を必要としていること、第2に、進化心理学の知見に従えば、出生後かなり早い段階から他者と協力的な関係を構築しようとする志向性を子どもたちが有しており、自らにとって近しい「わたしたち」という人間関係の範囲内で道徳的にふるまいうること、第3に「わたしたち」の範囲という人称的関係から非人称的関係へと移行するに...

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Published in道徳と教育 no. 335; p. 15
Main Author 走井, 洋一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本道徳教育学会 2017
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ISSN0288-7797
2435-1199
DOI10.34346/doutokutokyouiku.0.335_15

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Summary:本稿の目的は、道徳の授業を行う際に前提となる子どもの道徳性の発達を、進化心理学の知見を踏まえながら、再構築することを目的としている。本稿が得た結論は以下の3点である。まず第1に、道徳性の発達が他律から自律へという不可逆的なものではなく、可逆的なものであり、そのため、道徳的になり続けていくために教育を必要としていること、第2に、進化心理学の知見に従えば、出生後かなり早い段階から他者と協力的な関係を構築しようとする志向性を子どもたちが有しており、自らにとって近しい「わたしたち」という人間関係の範囲内で道徳的にふるまいうること、第3に「わたしたち」の範囲という人称的関係から非人称的関係へと移行するには、「一般化」ないしは「信頼の拡張」が必要とされるが、それは道徳性を高めることだけでなく、協同的な人間関係を構築する経験が必要になること、が明らかになった。
ISSN:0288-7797
2435-1199
DOI:10.34346/doutokutokyouiku.0.335_15