当教室における肝細胞癌に対する肝移植の現況 ~5-5-500基準の妥当性の再検証

(背景) 肝硬変を伴う肝細胞癌(HCC)では根治治療が困難なことが多く、肝移植が考慮される。近年、HCCに対する肝移植の適応拡大が進められ、新適応基準として5-5-500基準が保険適用となった。(目的) ミラノ基準内とミラノ基準外かつ5-5-500基準内のHCC併存肝移植例のHCC再発率や予後を比較し、5-5-500基準の妥当性を再考。 (対象・方法) 当科で肝移植を施行した56例のうち、HCC併存例10例を対象とし、各基準におけるHCC再発率および予後を評価した。(結果) 当科で肝移植を施行した56例中10例(18%)がHCC併存例であり、背景因子としてはHCV 4例、PBC 2例、HBV・...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 56; no. Supplement; p. s173
Main Authors 高野, 重紹, 酒井, 望, 西野, 仁恵, 大塚, 将之, 小西, 孝宜, 古川, 勝規, 久保木, 知, 高屋敷, 吏, 鈴木, 大亮, 細川, 勇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2021
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.56.Supplement_s173

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Summary:(背景) 肝硬変を伴う肝細胞癌(HCC)では根治治療が困難なことが多く、肝移植が考慮される。近年、HCCに対する肝移植の適応拡大が進められ、新適応基準として5-5-500基準が保険適用となった。(目的) ミラノ基準内とミラノ基準外かつ5-5-500基準内のHCC併存肝移植例のHCC再発率や予後を比較し、5-5-500基準の妥当性を再考。 (対象・方法) 当科で肝移植を施行した56例のうち、HCC併存例10例を対象とし、各基準におけるHCC再発率および予後を評価した。(結果) 当科で肝移植を施行した56例中10例(18%)がHCC併存例であり、背景因子としてはHCV 4例、PBC 2例、HBV・AIH・NASH・アルコール性が各1例であった。10例中7例でミラノ基準外のHCCに対して肝切除・RFA・TACEなどによりミラノ基準内となるように治療介入がされており、その結果、術前の画像検査上は10例全例でHCCはミラノ基準内であったが、病理上は10例中5例でミラノ基準外のHCCが確認され、ミラノ基準外の5例中4例が5-5-500基準内、1例が5-5-500基準外であった。10例全例でHCC再発を認めておらず、5年以内の死亡例も存在せず、HCCコントロール・肝移植経過ともに良好であった。(結語) HCCに対する肝移植の新基準としての5-5-500基準の妥当性が再確認された。また、移植準備が整うまで、集学的治療を行うことにより5-5-500基準内に維持することで肝移植を施行するチャンスを広げるとともに肝移植後の予後を改善することが示唆された。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.56.Supplement_s173