ICT投資が生産性に与える効果~ミクロデータに基づく検討

本稿では、情報通信技術(ICT)投資が企業の雇用と生産性に与える因果効果について、過去の研究の動向を概観した上で実証的に検討する。実証分析に当たっては、税制が ICT投資に与えた影響を計測した企業向けアンケート調査結果を利用した識別戦略によって、税制の変更に起因する外生的なICT 投資の増加が、企業レベルの総従業員数、IT人材の割合、社内と外部からの IT 人材の雇用数、労働生産性に与えた影響を推定する。情報処理実態調査及び企業活動基本調査の個票データを用いた推定結果によれば、税制ショックに反応した ICT 投資の結果、社内の非 ICT 人材が ICT 資本と補完的な ICT 人材として再配置...

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Published in経済分析 Vol. 209; pp. 87 - 114
Main Authors 滝澤, 美帆, 宮川, 大介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 内閣府経済社会総合研究所 29.03.2024
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ISSN0453-4727
2758-9900
DOI10.60294/keizaibunseki.209.0_87

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Summary:本稿では、情報通信技術(ICT)投資が企業の雇用と生産性に与える因果効果について、過去の研究の動向を概観した上で実証的に検討する。実証分析に当たっては、税制が ICT投資に与えた影響を計測した企業向けアンケート調査結果を利用した識別戦略によって、税制の変更に起因する外生的なICT 投資の増加が、企業レベルの総従業員数、IT人材の割合、社内と外部からの IT 人材の雇用数、労働生産性に与えた影響を推定する。情報処理実態調査及び企業活動基本調査の個票データを用いた推定結果によれば、税制ショックに反応した ICT 投資の結果、社内の非 ICT 人材が ICT 資本と補完的な ICT 人材として再配置されたものの、労働生産性の改善は確認されなかった。これらの結果は、ICT 投資が生産性を改善するためには、補完的な生産要素である労働の質(例:ICT リテラシー)を高めるための追加的な投資が必要となることを示唆している。
ISSN:0453-4727
2758-9900
DOI:10.60294/keizaibunseki.209.0_87