化合物レベル炭素安定同位体比分析のための高等植物中のステロール及び脂肪酸の分離精製法の確立

生物や環境試料中に含まれる有機化合物の同位体組成は,物理的,化学的,あるいは生物的な過程を経てわずかに変化する.したがって,起源特異的なバイオマーカーの同位体組成を化合物ごとに分析できれば,生物の代謝や生態を探ることが可能となる.しかし,環境試料中には非常に多くの成分が存在しており,高分解能ガスクロマトグラフィー(gas chromatography, GC)をもってしても化合物レベル安定同位体比分析に必要な成分相互の完全分離は困難である.本研究では,高等植物を分析対象として,シリカゲルカラム固相分画と順相高速液体クロマトグラフィー(normal phase - high performanc...

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Published inBunseki kagaku Vol. 68; no. 5; pp. 297 - 306
Main Authors 熊田, 英峰, 青木, 元秀, 梅村, 知也, 大河内, 直彦, 力石, 嘉人, 竹内, 理子, 風呂田, 郷史, 内田, 達也, 小川, 奈々子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published Tokyo 公益社団法人 日本分析化学会 05.05.2019
Japan Science and Technology Agency
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ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.68.297

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Summary:生物や環境試料中に含まれる有機化合物の同位体組成は,物理的,化学的,あるいは生物的な過程を経てわずかに変化する.したがって,起源特異的なバイオマーカーの同位体組成を化合物ごとに分析できれば,生物の代謝や生態を探ることが可能となる.しかし,環境試料中には非常に多くの成分が存在しており,高分解能ガスクロマトグラフィー(gas chromatography, GC)をもってしても化合物レベル安定同位体比分析に必要な成分相互の完全分離は困難である.本研究では,高等植物を分析対象として,シリカゲルカラム固相分画と順相高速液体クロマトグラフィー(normal phase - high performance liquid chromatography, NP-HPLC)によりステロール類と脂肪酸をそれぞれ別の画分に分取する分離精製法を検討した.なお,本法ではエステル型で存在するステロールや脂肪酸と区別するため,けん化処理を施さずに実験を行った.ブナ科コナラ(Quercus serrate)から抽出,精製して得たステロール画分をアセチル化,脂肪酸画分をメチルエステル化してガスクロマトグラフ燃焼同位体比質量分析計(gas chromatograph - combustion - isotope ratio mass spectrometer, GC-C-IRMS)で分析したところ,stigmast-5-en-3-β-ol(β-シトステロール)並びに長鎖飽和脂肪酸(C26,28)については,同位体比測定の妨害となるような近接ピークが存在しないBase-to-Base分離を達成した.また,標準物質を用いた検討により,前処理全体での目的成分の回収率は110〜125%,δ13C値の変化は<1‰ であり,同位体比保存的な分離精製であることを確認した.本法を用いて,2018年4月と10月に採取したコナラの生葉中のβ-シトステロールと長鎖脂肪酸のδ13C値を測定したところ,10月に得られたδ13C値は1.4‰,4月に比べて低くなる傾向が見られ,光合成同位体分別の季節変動と調和的な結果が得られた.
Bibliography:ObjectType-Article-1
SourceType-Scholarly Journals-1
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ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.68.297